(EYE モニターの目)今月のテーマ:チャットGPTをめぐる報道

EYE モニターの目

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 ■生成AIのリスク知らせて

 4月14日オピニオン面「津山恵子のメディア私評」を読み、「こたつ記事」というものの存在を初めて知った。私は今まで、記事の全ては記者が直接取材して掲載していると思っていたので、とても驚いた。また、本当に今後、リアルタイムの「映像」や「音声」があっても「真実」の証明にはならない世界が来たら、何を信じたら良いのか不安になってしまった。津山氏と同じように、生成AIのリスクを世間にもっと知らせていくことは、新聞の責務だとも思った。

 (矢野潤 68歳 北海道)

 ■思考力低下を招く恐れは?

 AIの進化が生活にどのような影響があるのか、具体的に知りたい。例えば、将来を担う若者の教育現場では、ChatGPT(チャットGPT)の登場で学生のリポート作成が容易になりそうだ。しかし、リポートは本来、課題に対して自分で考える力、情報を収集する力、そして要約する力を養うことに意味がある。チャットGPTに依拠すれば、その場をしのげても、結果的に、若者の思考力低下を招きかねない。このような視点から報じることで、社会に警鐘を鳴らしてほしい。

 (伊豫田千里 23歳 愛知県)

 ■どう使えば良いか、学ぶべき

 チャットGPTを実際に使ってみると、その回答の自然さと素早さに驚くが、自分の知識が及ぶ範囲に関しては間違いがあることにも気づく。逆に、知らない分野では正誤が判断できずにうのみにしてしまうだろう。そういった意味で、教育現場での利用制限はあってしかるべきだと思う。ただ、禁止するだけではなく、どう使えば良いのかも同時に学んでいくべきだ。ガラケーからスマホへの変遷と同じように今後、AI無しでは社会は成り立たず、誰もが使うことになるだろうから。

 (佐藤敦子 47歳 千葉県)

 ■新聞社はどう活用していく?

 世界的に見て、日本の生成AIの開発力がどの程度の位置にあるのか知りたい。日本で開発されたものはあるのか。また、チャットGPTはどのような仕組みで学習していくのかも、わかりやすく解説してほしい。利用者が打ち込んだ文章が片っ端からデータとして蓄積されるのだろうか。いずれ新聞業界もAIの活用が不可避になると推測する。朝日新聞社はAIをどのように活用していくのか、現時点の考えに興味がある。個々の記者の意見や気持ちも記事にしてほしい。

 (大野貴弘 37歳 兵庫県)

 <使われずに使いこなすための助けに>

 チャットGPTに「朝日新聞の西山公隆さんってどんな人」と聞きました。大阪に生まれ、米国特派員、防衛省の有識者会議委員を務め、最後は退社します。実際は、私は宮崎県出身でずっと国内勤務。防衛省の委員をしたことはなく、いまも朝日新聞にいます。

 「この程度か」。正直そう思いました。しかし、私を知らない人がチャットGPTをそのまま信じたとしたら……。

 モニターのみなさんの声からは、チャットGPTへの警戒感がうかがえます。答えの元になるデータはどこから、どのように集められたのか、そもそも正しいのか。人から思考力を奪わないか。いや、使い方によってはメリットも多いのでは。この春、編集局の各部を横断して立ち上げた取材班の関心もまさにそこにあり、様々な角度から報じています。

 新しい技術はいや応なく私たちの生活になだれ込んで来ます。チャットGPTとは何者で、その利害得失は何なのか。使われるのではなく使いこなす。その助けになる報道をめざします。もちろん「チャットGPTが書いた記事の方がいい」なんてこともないよう心します。

 (東京経済部長・西山公隆)

 ◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています

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