(ThinkGender)女子リーグ、盛り上げるには Jと「共催」・地域密着・五輪「銀」追い風=訂正・おわびあり

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 昨夏の東京五輪で銀メダルに輝いたバスケットボール、2011年にワールドカップを制したサッカー。国際舞台でどんなに結果を残しても、女子の国内リーグへの注目度は男子に及びません。盛り上がる日は来るのか、どうすれば盛り上がるのか、考えました。金島淑華伊木緑松本麻美

 昨年9月に開幕したサッカー女子のプロ「WEリーグ」は、1試合の平均入場者数の目標を5千人と掲げている。岡島喜久子チェア(代表理事)は「興行として成立させるためにクリアしなければならない数字」と明かす。ただ、全22節のうち第10節終了時点で1715人にとどまる。

 期待を寄せるのがJリーグとの「共催」だ。4月にはWEリーグ・日テレ東京ヴ―千葉戦をJ2東京ヴ―千葉戦と、5月には新潟―日テレ東京ヴ戦をJ2新潟―東京ヴ戦と同日に同じ会場で開催する。岡島チェアは「Jリーグファンをうまく取り込めれば」と話す。

 東京五輪で金メダルに輝いたソフトボールは、今月28日に新リーグ「ジャパンダイヤモンド(JD)リーグ」が開幕する。

 JDリーグが目指すのは五輪や国際大会に頼らず、地域やスポンサーが満足できるリーグだ。スポンサー7社がつき、事業規模は従来の日本リーグの約3倍になるという。

 日本リーグ時代から米国代表の主力も所属する世界最高峰のリーグだったが、主な観客は所属企業の社員や関係者。1日の平均観客数は約1500人にとどまった。プロ野球・日本ハムで球団代表を務めた島田利正チェアマンは「世界最強リーグだと認知してもらえていない。新リーグの運営側の課題」と話す。

 バスケット女子でプロアマ混合のWリーグの平均観客数は、新型コロナウイルスの影響を受ける前の18~19年シーズンで1208人。男子プロBリーグ1部(3078人)の4割弱にとどまった。

 ただ、今季は開幕直前に女子日本代表が東京五輪で銀メダルを獲得した影響もあり、チケットの完売日も出ている。プレーオフ決勝では「史上初の1万人集客」を目標に掲げている。

 ■懐疑的な見方「変える必要」

 世界の女子スポーツは近年、ビジネスの観点で注目を集めている。

 コンサルティング会社デロイトの報告書によると、米国の大手放送網CBSは19年からバスケットボール女子WNBAの中継で複数年契約を結んだ。クレジットカード大手のVISAは、欧州サッカー連盟の女子に特化した初のスポンサーとして18年から7年契約を結んだ。放映権が高騰する男子スポーツに比べて契約が容易であること、金銭面だけでなくジェンダー平等を示す面でも価値があることなどが背景にあると分析している。

 日本でも、女子リーグがこれまで以上に観客やスポンサーを集めることはできるのだろうか。

 城西大の山口理恵子教授(スポーツジェンダー論)は、女子スポーツへの懐疑的な見方から変える必要があると考える。

 「女子には潜在的な可能性がある、というのは世界的な潮流。スポンサーやメディアも含め、関係者が自ら女子の可能性や魅力を疑っているせいで、実現できていないことがたくさんあるのではないか。そのせいで、一枚岩になりきれていないように思う」

 同じスポーツでも女子は男子に比べスピードやパワーで見劣りするが、山口教授は「観戦を楽しむファンの視点は豊かで、人の心を揺さぶるのはスピードやパワーだけではない」と指摘。「感情移入できる選手に出会うことで、女子スポーツにハマる人もいる」と話す。

 ■選手知ってもらい、観戦つなげたい バスケ日本代表・高田真希

 バスケット女子日本代表の主将として東京五輪銀メダルに貢献した高田真希(32)に、Wリーグの選手を取り巻く環境について聞いた。

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 プレーのダイナミックさでいえば、男子にはかないません。でも、ありがたいことに銀メダルを獲得した東京五輪後はバラエティー番組などメディア露出が増え、女子代表の選手を知ってもらう機会が増えました。「あの人面白いよね」から「近くで試合をやっているから見に行ってみようかな」につなげたい。

 子どもたちに、職業として「女子バスケット選手」を勧められるかというと、個人的には半分半分です。多くのチームで企業のバックアップがあり、練習場などの環境も整っています。ただ、好きなバスケットに思う存分打ち込めるのは現役のうちだけ。Wリーグは高卒の選手も多く、バスケット以外の世界をほとんど知る機会がない。指導者の道を選ぶにしても企業に残って働くにしても、苦労する先輩の姿をたくさん見てきました。

 出産・育児を見据えて安定を重視する女子選手は少なくありません。引退後もバスケットに関わることが第一でないという考え方もある。選手は現役時代から引退後のビジョンを持つことが大事。女子バスケット界全体で考えていかなければいけないと思います。

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 たかだ・まき Wリーグのデンソー所属。東京五輪バスケ女子日本代表主将。20年にバスケット普及のイベント開催などを手がける株式会社を設立。

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 ThinkGender ジェンダーを考える

 <訂正>

 8日付「女子リーグ 盛り上げるには」の記事で、バスケット女子日本代表の高田真希が「北京五輪銀メダルに貢献」とあるのは「東京五輪銀メダルに貢献」の誤りでした。

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