(EYE モニターの目)今月のテーマ:北京五輪をめぐる報道

EYE モニターの目

[PR]

 ■札幌招致活動の舞台裏は

 一番心に残った記事は、2月5日朝刊2面で、北京が開催地になった経緯を振り返った「五輪の限界 あらわ」だ。「民主主義国家がどこもやりたがらないんだから仕方ないだろ」というIOC委員の言葉は衝撃的だ。バッハ会長の「スポーツだけでは平和を生み出せない」に、五輪の意義が分からなくなった。開催国決定までの舞台裏をさらに詳しく読みたくなった。札幌五輪の招致活動が進められている今、国民が自分ごととして考えなければいけない問題だ。(魚住和代 56歳 三重県)

 ■中国の市民の思い、伝わった

 中国の人たちが、この大会をどう思っているのか知りたかった。東京五輪では多くの人が異議を唱えた。中国にも同じ思いをしている人がいるはずだ。表立って言えない国で、どのように意思を表明しているのだろう。2月6日朝刊社会面の現地からのコラム「北京の風2022」から、人々の気持ちが伝わった。市民を締め出して開催された開会式で、せめて花火を見ようと集まった群衆。制止する警官の声が聞こえないふりをして動かない姿に意思を貫こうとする生き方が見えた。(松林亮子 65歳 愛知県)

 ■社会のあり方と結びついた

 2月8日朝刊1面「消えた大ジャンプ」は、高梨沙羅選手がスーツの規定違反となった経緯をドラマ風に丁寧に描いていて、ジャンプになじみのない素人にもすんなり頭に入った。10日朝刊スポーツ面の「高梨の投稿 どう考えれば」で、インスタグラムへの投稿全文とスポーツ心理学者のコメントを併せて読み、事態を整理できた。「チャレンジしたことを評価するより、失敗をみんなでたたく風潮」という学者の指摘が、日本社会のあり方と結び付けて考えるよい契機となった。(大西隆雄 69歳 北海道)

 ■想像を超えたドラマ、選手に

 コロナ禍の開催や人権問題などもあり、東京五輪に続き北京五輪もややさめた目で見ていた。その中で、東京五輪のときから続くシリーズ記事「Why I Stand/だから私はここにいる」が、いい意味で異彩を放っていた。メダルや国籍に関係なく、一人ひとりの選手に想像を超えたドラマが潜んでいる。そこを丁寧に取材し、なかなか知りえなかった選手の生きざまを伝えてくれる。世界の選手が勝敗を超えて力を傾け、互いの健闘をたたえ合う。そんな姿こそ私は知りたい。(山戸眞理子 64歳 大阪府)

 <金メダル以上の価値とは、再確認>

 スポーツや五輪の価値とは何か。北京五輪前に取材班で議論しました。再確認したことの一つは、「金メダルの価値は高いが、それ以上に価値の高いことがある」ということです。

 フリースタイルスキー女子中国代表の谷愛凌(アイリーン・グー)は、父が米国人、母が中国人で米国育ち。米国人か中国人かと問われ、18歳は「枠にはまる必要はない」と答えます。スケルトン女子ブラジル代表選手は看護師でした。共に新型コロナウイルスと闘った患者に励まされて北京の舞台に立ち、そこでパートナーでもある同種目の女子選手と再会します。

 生き方は、決して一つではない。それぞれが信じた道を行けばいい。難しいことが起きた時でも、型にはまらない柔軟な考え方ができる選手。その言葉や行動にこそ広く知らせる価値があると感じ、大きく報じました。

 中国や国際オリンピック委員会が「成功」を叫ぶ。一方、厳しい制限で異文化交流もできない市民の現実、人権問題にふたをする五輪の矛盾もあらわになりました。多くの人に、より良い五輪やパラリンピックのあり方を議論してほしい。そう考え、今後も課題を共有する報道を進めます。(スポーツ部次長・後藤太輔

 ◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています

     *

 公募で選んだ読者の皆様に「紙面モニター」をお願いし、毎週、お寄せいただく意見の一部を紹介します。この欄は、編集現場との「対話」の場を目指しています。紙面モニターの意見に対し、編集局などの担当部署の責任者が答えます。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載EYE モニターの目

この連載の一覧を見る