京都・淀の水害 秘仏に祈りの歴史 淀君ゆかりの観音さま 特別公開

清水謙司
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 豊臣秀吉の側室・淀君の念持仏とされる観音さまが、京都市伏見区浄土宗・常念寺(じょうねんじ)で26日から特別公開される。水害に悩まされた寺が移転を繰り返しながら、大切に守ってきた秘仏だ。この観音さまを拝むとともに、地区の歴史にも注目してもらいたいという。

 観音さまは高さ42センチの「郡分(こおりわけ)十一面観音菩薩(ぼさつ)」。切れ長の目や、しなやかな体つきが特徴の木造の立像で、14世紀に制作されたと伝わる。

 淀は平安京の外港として栄えた淀津があったとされる。寺は桂川右岸の伏見区淀水垂町にあり、この地区は水害に悩まされてきた。

 本多廣賢住職(73)によると、川の改修工事に伴い、明治時代の1900年ごろに移転した。その後も水害の危険度を下げるための工事で、地区はさらに移転した。寺は2010年、いまの場所で落慶法要をした。観音さまを安置する観音堂も再建された。

 このときの移転を機に、寺は観音さまを修復し、23年に開眼法要をした。金色に輝き、彩色豊かな元の姿にほぼ戻った。

 修復前は真っ黒だった。明治時代の廃仏毀釈(きしゃく)から守るため、目立たないように黒く塗られた可能性があるという。内部には、戦国時代の「天文17年」や「雨復(あまおおい)」という字が記されていた。本多住職によると、雨復は水にぬれないことを指すという。

 本多住職は「水害から守ってほしいとの願いが込められているのでは。観音さまからは淀の深い歴史が感じられます」と話す。

 期間中には本尊・阿弥陀(あみだ)如来立像なども拝観できる。本多住職らが仏像や寺を案内し、特別講演もある。27日は淀の歴史、28日は寺の近くの遺跡をテーマに専門家が話す。

 特別公開は29日まで。午前10時から午後4時(受け付けは午後3時半まで)。大人千円、中学生以下無料。問い合わせは常念寺(075・631・3493)。

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この記事を書いた人
清水謙司
京都総局|歴史、社寺文化財
専門・関心分野
歴史、社寺文化財、文芸、民俗、食文化、人権問題