「ヨーイ ヨイヤセッ」 勇壮に豪快に 大みこしで祈る大漁満足

根岸敦生

 大漁と海の安全を祈る「大潮祭り」が20日、千葉県銚子市の川口神社で行われ、重さ約1トンともいわれる大みこしが銚子漁港一帯を巡って豊漁を祈った。

 大潮祭りは、旧暦6月15日にあたる大潮の日に開かれる川口神社の例祭。大潮の日の海水を神前に供えて大漁祈願をする祭りで、利根川河口近くの川口神社を朝6時半に大みこしが出発。漁港内の3カ所の卸売市場や、船主、水産加工業者などを「ヨーイ、ヨイヤセッ」の勇壮な掛け声とともに、1日かけて練り歩いた。

 コロナ禍などの影響から、約500人の担ぎ手が集まって丸1日練り歩く正式な形での開催は5年ぶり。古文書などによると、川口神社は現在の川口町一帯の魚商人のほか、漁師、水産加工業者などが管理してきた。伝統を受け継ぎ、現在は氏子である銚子市漁協が管理している。

 銚子漁港は昨年、サバが不漁で、全国主要漁港水揚げ量ランキングで、12年連続して守ってきた首位の座から陥落した。例年であれば銚子沖でとれるマイワシの「入梅いわし」は今年も不漁で、地元では「大潮祭りをきちんとやらないから漁が不振なんだ」と験を担ぐ声も出ていた。

 銚子市漁協の坂本雅信代表理事組合長は「今年も前半は水揚げが厳しい状態だが、後半は日本一奪還に向けて盛り上げていきたい」と話した。(根岸敦生)

 銚子漁港の南、外川漁港でも20日、渡海神社の大潮まつりが行われた。ここは江戸時代に移住した崎山次郎右衛門がイワシ漁を始め、栄えた。銚子の漁業の始まりの地とも言えるところだ。今は一本釣りのキンメダイ漁が中心だ。

 15年ほど前までは銚子漁港同様、大みこしが練り歩いていたが、高齢化と担い手の減少で神事だけが行われるようになった。

 銚子のような笛や太鼓ではなく、甚句が歌われた。だが、「もう歌える人がいるかどうか……」と今年の祭典委員長の金野一男さんは話す。

 それでも白装束の3人が海水をくみ上げ、大潮の海水を神前に供える神事が、銚子市漁協外川支所前で行われた。32歳のキンメ漁師の田村昌義さんは「子どもの頃、僕もいつかみこしを担ぐようになりたいと思った。何とか復活させたいけど、担ぎ手が高齢化していて……」と話す。

 祭りの姿は変わっても、伝統行事を守っていく気持ちに変わりはない。(根岸敦生)…

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この記事を書いた人
根岸敦生
千葉総局|銚子・旭地区担当
専門・関心分野
大相撲、能狂言、地図