水俣病「聞かないモード」が露見した国の姿勢 中島岳志氏が語る背景

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聞き手・福井万穂

 水俣病患者らの団体との懇談中に環境省がマイクの音を切った問題をめぐり、伊藤信太郎環境相が急きょ、現地を訪れて謝罪することになった。水俣病に苦しんできた患者側と国との間の深い溝が浮き彫りになったが、一連の対応から、何が読み取れるのか。水俣病問題に長く関心を寄せてきた東京工業大教授の政治学者、中島岳志さん(49)に聞いた。

 ――問題となった懇談から1週間がたち、環境相が突然、直接謝罪に行くと表明しました。これまでの経過をどうみますか。

 まず、「謝罪とはいかなる行為なのか」ということを考えるべきだと思っています。

 水俣病が公式確認された5月1日に開かれる慰霊式や患者らとの懇談会には例年、環境相が出席し、謝罪の言葉を述べます。今回は話の途中でマイクの音を切るという対応が問題となり、現地まで謝罪に行くことになった。これらは果たして、心からの「謝罪」として伝わるのでしょうか。

 水俣病は、国をはじめとする行政が加害企業のチッソとともに生み出してしまった失政です。もし、「自分の代でこの問題を解決しよう」という気持ちが環境相にあれば、水俣病の歴史を自分なりに勉強して、余裕を持ったスケジュールで現地に赴き、じっくりと話を聞こうとすると思います。

「聞く姿勢も謝る姿勢も間違えていた」

 どれだけ多くの人生と、動植…

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