「待ったなし」の身寄りなき老後の支援 自治体が始めた独自サービス

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石川春菜 土肥修一 山田史比古

 「葬儀をしてくれる人がいない」「入院時に頼れる親族がいない」「認知症になったときのお金の管理が心配」――。

 東京都豊島区の終活に関する総合的な相談窓口「終活あんしんセンター」には、日々、高齢者らの困りごとや不安の声が届く。2023年度は延べ755件の相談があり、そのうち7割超は一人暮らしの人だった。

 窓口を設けたのは2021年から。豊島区は75歳以上の住民のうち独居の割合が4割近く、そうした人たちの暮らしを支えるためだ。豊島区民社会福祉協議会に運営を委託し、平日午前9時~午後5時、来所のほか電話やメールでも相談を受け付けている。

 窓口では、身の回りの情報や、医療・介護、死後の希望をまとめる「エンディングノート」の使い方を伝えるなど、終活に関する情報を提供する。

 必要ならば弁護士や司法書士といった専門職につなぎ、見守りや、判断能力が低下した場合に備える「任意後見」、葬儀などを頼む「死後事務委任」といった契約を結ぶのを支援してきた。

 案内する内容は、終活にとどまらない。

 障害がある子どもがいるなど、相談者が抱える問題に応じてほかの窓口にもつなげる。話を聞くうちに判断能力の低下があることに気づき、福祉サービスの利用の手続きや金銭管理などを支援する「地域福祉権利擁護事業」につないだケースもあるという。

 2022年には「終活情報登録事業」も始めた。緊急連絡先や遺言の保管場所などを区に登録しておき、亡くなった場合などには事前に指定した親族や友人などに情報が伝えられる。これまでに約40人が登録し、ほとんどが一人暮らしの高齢者という。

 相談者の年代は、80代が37.5%、70代が32.6%を占める。担当者は「困りごとに直面してからではなく、もっと早い段階で備えるように啓発をしていきたい」と話す。

 さらに今年度からは、定期的…

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