米軍基地前の宝くじ売り場 嘉手納生まれの「名付け親」が託した思い

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上地一姫
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 轟音(ごうおん)が徐々に大きくなり、戦闘機が近づいてくる。

 「きた、きた」。待ち構えていた人たちが、一斉にカメラやスマホのシャッターを切る。頭上の掲示板には「電車が通る時のガード下」音に匹敵する103デシベルが点灯する。

 沖縄本島中部、嘉手納町の道の駅かでな。せり出す形に設計された展望所の眼下には、米軍嘉手納基地が広がる。

 国内だけでなく、中国や台湾、韓国など海外からの客も訪れる。目当ては、4千メートル級の滑走路2本で離着陸を繰り返す米軍機だ。近隣を周回し数十分おきに戻ってくる機体も、遠方で訓練し数時間後に戻ってくる機体もある。

 「すごい見晴らし。いる間に米軍機の離着陸は見られなかった。騒音は体験できず残念、といったら地元の人に悪いですね」

 2月下旬。今井義和さん(62)=千葉市=は、家族旅行で訪れた。昨年、展望所の下にある「吉の見える宝くじ売場(うりば)」で宝くじを買い、当たったため再訪。この日も購入した。

基地がある現実が変わらないなら使ってやろう

 「基地」と「吉」。同じ音の「きち」を引っかけて店名に「吉の見える」と付けたのは、この町で生まれ育った店主の伊敷猛さん(54)だ。店を構えるには立地が重要。年間50万人以上が訪れる道の駅はうってつけだった。

 ネーミングにも工夫を凝らした。「目の前に基地がある現実が変わらないなら、皮肉を込めて使ってやろう」

 町の総面積の約82%を嘉手…

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