第5回市長会見の切り抜き動画、刺激優先 「身の危険」質問やめる議員も

 「『みる・きく・はなす』はいま」は、1987年5月3日に朝日新聞阪神支局が襲撃され、記者が殺傷された事件をきっかけに始まりました。憎悪、差別、不寛容……。今回は、デジタル空間で増幅された感情が現実社会にもたらす影響を報告します。

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 「何もアクションを起こしていない議会、いったい誰のために仕事をしているのかと」

 4月22日午前10時、広島県安芸高田市の会見。市長の石丸伸二(41)は議会をやり玉に挙げた。

 11時間後、市がその動画をユーチューブの公式チャンネルに投稿すると同時に、約650キロ離れた東京23区の駅に近いレンタルルームで、男性(38)が作業を始めた。もう1人のスタッフと編集し、テロップを入れる。冒頭30秒のダイジェストに入れたのが、石丸の議会批判だ。

 「議員なりメディアなり『市長にとっての悪役』がはっきりしていて爽快。タイトルになるパワーワードがあってわかりやすい」。最近印象に残った言葉として、「(質問した議員に)破滅的に問題ですよ」(3月の議会常任委)、「(議会が議会だよりの発行費計上を可決したことに)不適切にもほどがあるでしょう」(3月の会見)、「ダメです。議会にこびだしたら首長が!」(4月の会見)を挙げた。

 4時間半かけて、1時間13分の会見を31分に縮めた動画が完成。ユーチューブに投稿された。

 男性は昨年末から、石丸に関するチャンネルを運営。1日に3~4本、これまで約380本投稿し、4月は5230万回再生されたという。再生数を稼ぐには速さは重要。会見や議会の日程をチェックする。

 競合相手は多く、会見や議会のたびに、非公式の「切り抜き動画」が次々できていく。「ポンコツ進行 議会崩壊」「完全論破で公開説教」「圧倒的インフルエンサー石丸市長」――。そんなタイトルだ。

 運営者5人に取材した。全員が石丸とは面識がなく収益目的と答え、月数百万円の収益をあげる人も。安芸高田市に行ったことがない人ばかりだった。

■関心引くための「炎上」否定…

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