第1回「生きててごめん」ゼミの後、うつ病に 22歳で命を絶った大学院生

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 昨年4月、生物系の研究をしていたアマネさん(当時22歳)は、父(66)と大学院の入学式に参加した。

 3年前に母親を亡くし、父と兄と3人暮らし。緊張しつつも、期待に胸を膨らませる娘の姿をみて、父は誇らしく思った。

 だが、異変は5月半ば過ぎに訪れた。

 「大学院辛(つら)い」

 夕方ごろ、アマネさんから届いたメッセージに父はぎょっとした。知人の葬儀に参列中で、時折スマホが震えているのに気づいてはいたが、見ていなかった。不在着信が3件、「送信を取り消しました」というLINEメッセージも3件、届いていた。

 その前日、ゼミで研究成果の発表があると、ほぼ徹夜で資料の準備をしていた。

 「うまくいかなかったのだろうか」。夜9時ごろに急いで帰宅すると、アマネさんは食卓に座り、肩を震わせ号泣していた。手にはウイスキーのボトルを持ち、ラッパ飲みをしながら。

 これほど感情を表に出している娘の姿は見たことがなく、大きなショックを受けた。

 「准教授にボロボロに言われた」

 「これまでの研究を全否定された」

 アマネさんは泣きながらぽつ…

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    市原麻衣子
    (一橋大学大学院法学研究科教授)
    2024年5月7日17時55分 投稿
    【視点】

    大学院生を指導する者として、他人事ではない記事です。そして自分が大学院生の時も、博士論文の進展が思わしくなく、身を投げたいと思ったこともありました。 指導する側になって感じるのは、学生の不調のサインは本当に微細なところに現れるため、相当気

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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2024年5月7日20時36分 投稿
    【視点】

    私はスポーツ界の文脈でのメンタルヘルスの議論には慣れていますが、そういえばアカデミックな分野でのその議論は聞いたことがなく、ああ、この分野もかなり開拓の必要があるなと、この春から大学院に通い出したアラフィフの大学院生として思いました。そうい

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