海と電動スクーター、「置き去りの町」を歩く 英国政治への徒労感

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英ブラックプール=藤原学思
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 その町はかつて、英国屈指のリゾート地として名をはせていた。海があり、遊園地があり、いたるところにフィッシュ&チップスを売る店があり、家族連れの笑顔であふれていた。

 社交ダンスの聖地としても知られ、映画「Shall We ダンス?」(1996年公開、周防正行監督)のロケ地にもなった。町のシンボル「ブラックプールタワー」は1894年につくられ、建物内の舞踏場は「英国で最も華やか」とうたう。

 だが、ここ数年は英メディアから、こんな否定的な表現とともに報じられている。

 「置き去りにされた町」

 英イングランド北西部にある海沿いの町、ブラックプール。5月2日に行われる英国の統一地方選と同じ日に、この町では下院議員を選ぶ補選も開かれる。今年中の実施が目される総選挙の、いわば「前哨戦」だ。

 市民は何を思い、1票を投じるのか。

「最も困窮した町」の景色は…

 4月下旬、電車を乗り継ぎ、ロンドンから北西に300キロ離れた駅を出た。すぐ目に入るのは、ガラス張りの巨大なスーパーマーケット。2011年にオープンし、2~3階には無料の駐車場を備える。

 ただ、ある市民はこの建物を「ガラスと金属でできた壁」と言った。「だって、裏側にあるひどい町並みを隠しているから」

 町を歩けば、その意味はすぐにわかる。多くの店がシャッターを閉め、看板は色あせている。

 劇的に町の人口が減っているわけでも、高齢化が進んでいるわけでもない。22年のブラックプールへの訪問者は「過去最高」の2千万人超となった。町議会によると、イルミネーション期間の延長や大規模なテレビ宣伝といった、観光業界の奮闘があったという。

 一方、その陰では、健康で裕…

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