第5回「道路イズ政治、政治イズ道路」島根補選敗北、利益誘導政治の終焉か

有料記事王国の崩壊 解剖自民党

川辺真改
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 衆院島根1区補選の告示を控えた4月上旬。松江市にある島根県建設業協会の会議室には建設関係者ら約80人が集まった。「あの時のことを思い出して下さい」。建設業団体の組織内議員である自民党参院議員、足立敏之は公認候補への支持を訴えた。

 国土交通省出身の足立が言う「あの時」とは2009~12年の民主党政権。民主党は政権交代選挙で「コンクリートから人へ」のスローガンを掲げ、公共事業費の削減を公約とした。流れをくむ立憲民主党の候補との一騎打ちとなった補選で、自民側は当時を想起させることで、裏金事件で離反する島根の有権者を再び引きよせようとしていた。

 地元の公明党幹部も「『コンクリートから人へ』は美辞麗句だ。自民でなければ生活を守ってくれないと思う人が島根には多い」と語る。

 建設事業者も同じだ。「『コンクリートから人へ』の優しい言葉でどれだけ我々が苦汁を飲んだか」。自民候補への支援を求める建設会社の社長は選挙期間中、社員にこう訴えた。「『あの時』から建設産業は人気がなくなった。公共工事は『悪』と言われた。耐えて、耐えて、耐えて、生き抜いた会社だけが残っている。地域を守る担い手として盤石の態勢でやらねばならない」

 衆院への小選挙区制の導入以降、全国で唯一、自民党が議席を独占してきたのが島根県だ。今回の補選の敗北は、有力議員の競い合いで自民が各地で強固な地盤を誇った中選挙区時代のモデルが、島根という最強の自民王国でも崩壊したことを意味する。小選挙区導入から丸30年。個々の政治家が地方議員らを従えて戦う手法は機能せず、党の看板に左右されるようになった。そうした選挙のあり方が、いよいよ島根に及んだ。選挙制度など歴史的背景を踏まえ、検証していく。

 地元の建設業界幹部も「高速…

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