選手は自腹、五輪「ゼロ」の現実 「運ゲー」変えるため選手は動いた

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加藤秀彬
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 「マイナー競技」のカヌーでどう生きていくか。当銘孝仁(とうめたかのり)(31)はこの3年、そのあり方を考え続けてきた。

 元は、2021年の東京五輪で引退するつもりだった。当時28歳。選手として脂が乗っていた。だが、初の五輪は準々決勝で敗退。燃え尽きることはなかった。

 沖縄県出身。東京五輪までは新潟県三条市のスポーツ協会に所属していた。いわゆる「国体要員」だ。

 多くのカヌー選手は高校や大学を卒業後、都道府県から強化費をもらうか、企業に所属して競技を続ける。日本代表になると日本カヌー連盟の合宿に参加し、コーチから指導を受ける。当銘はこのあり方に疑問を感じていた。

 「例えば1カ月に20万円ぐらいの給料と活動資金をもらえたら、ある意味楽だし、初めは悪くないと思う。でも、フラストレーションもある。日本のカヌーは業界が小さいから、選手がコーチを選べない。コーチと合うかなんて分からない、『運ゲー』なんですよ」

 新潟で高校生を指導することもある。そこで気づいたのは世代間のギャップだ。今の若い選手は、押しつけられる指導を好まない。コーチを選ぶ余地がない競技を若者たちが続けるとは思えなかった。

 「あの子たちにカヌーで食っ…

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