「天才だけが生き残る」 原沢久喜が直面した現実 追い求める再現性

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塩谷耕吾

 「五輪で金メダル」が最優先されてきた日本柔道界で、五輪から遠ざかった後も現役を続ける選手は何のために戦い続けるのか。29日に東京・日本武道館で行われる全日本選手権に出場する五輪メダリストに聞いた。

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 原沢久喜(31)=長府工産=は2016年リオデジャネイロ五輪の男子100キロ超級で銀メダルに輝いた。

 当時24歳。国内2番手から国際大会7連勝の驚異的な追い上げで出場権をもぎとり、五輪でも決勝まで駆け上がった。

 内股を中心に技も切れ、一本勝ちの山を築いていた。「1敗も出来ない状況に追い込まれ、開き直って負けを恐れなくなった。五輪本番も緊張せず、ゾーンに入ったような状況だった」

 その後の競技人生は、その成功体験を追いかける、旅だった。

 21年東京五輪では当初「勝ち負けにこだわらないようにしよう」と考えていた。

 だが、大会が近づくと勝敗のことが頭から離れなかった。「地元開催の五輪では無理だった」。技にこだわって投げようとすればするほど、うまくいかない。

 大会前の新型コロナウイルス感染も影響したのか、準々決勝後に全身がけいれんして嘔吐(おうと)を繰り返した。準決勝、3位決定戦は何も出来ず、5位に終わった。

 自分に何が足りなかったのかを考えた。五輪直後は「楽しむ気持ち」だと思っていた。勝つために、「楽しもう」と考えた。

 だが、国内大会でも優勝に届…

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