「立地だから責務、ではない」原発抱える福井県 核のごみ処分場で

佐藤常敬 長屋護
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 原発から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)の最終処分場をめぐり、原発が立地する佐賀県玄海町の町議会が26日、文献調査を求める請願を採択した。請願は、調査に応じることを「(原発がある)自治体の責務」とする。一方、廃炉作業中を含め原発15基を抱える福井県内ではこの日、首長らが「国全体の責務」とする従来の意見を強調した。

 敦賀市の米沢光治市長は26日の定例会見で玄海町議会の請願採択について、「地域の事情を踏まえての判断だ。それぞれの判断が尊重されるべきで、玄海町の状況を見守りたい」と話した。市内には日本原電敦賀原発1、2号機(1号機は廃炉作業中)があり、立地自治体など28市町村でつくる「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協)の会長も務める。

 立地自治体としての「責務」という論法については、「立地だから責務があるとは思っていない」とし、「立地か、立地でないかに関わらず国全体で考えることだ」。最終処分に関する敦賀市の考えを問うと「現時点で手を挙げることはない」と明言した。

 25日の玄海町議会原子力対策特別委員会では請願賛成派が「調査」と「建設」は別と主張。その中で米沢市長が昨年10月に町議らと意見交換した際、文献調査の応募については「高レベル廃棄物の地層処分を受け入れる覚悟ですべきだ」と発言したと紹介された。

 会見で発言の真意を尋ねると、「正直申し上げて、申し訳ないが発言したか覚えていない」。全原協事務局の市原子力安全対策課の担当者も「そんな強いこと市長が発言したかな」と困惑する。ただ米沢市長は「最終的に最終処分になることを想定して手を挙げるんじゃないのかと思う」と語った。

 他方で「調査は調査。そういう議論があっていいと思う」と話し、「手を挙げるところが少ない中で、文献調査に手を挙げることに意味があるんだという考えを否定しない」と述べた。

 杉本達治知事は26日の定例会見で、玄海町議会の動きについて「それぞれの自治体の議会などでの議論であり、コメントは控えたい」とした。その上で県として原発の立地を受け入れる形で国のエネルギー政策に長年協力してきたことを強調。「放射性廃棄物の処理については、一部地域の課題ではなく、国が責任をもって取り組む必要がある」との考えを改めて示した。(佐藤常敬、長屋護)

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