発達障害の人が活躍できる職場作り 「苦手に配慮」より大切なことは

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鈴木彩子
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 発達障害など、脳や神経に由来するさまざまな特性の違いを、「多様性」ととらえて尊重し、社会の中で生かしていく――。「ニューロダイバーシティ」という考え方を取り入れた職場の環境づくりを進めようと、企業の担当者が共に学ぶ取り組みが始まっている。

 「採用面接は、対面とオンラインと、選べる方がいいんじゃない?」「受け入れ職場への研修も必要だよね」――。

 4月、東京都内であった「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」のワークショップ。さまざまな業種の企業9社から、人事部門の担当者など約20人が参加。五つのグループに分かれて、活発に意見を交わしていた。

 この日のテーマは、発達障害がある人が企業で戦力となり働くためには、採用時やその後のフォローアップには何が必要なのかを考えること。

 グループワークの前には、参加者に具体的なイメージをもってもらうため、金融会社で正社員として働いている、発達障害がある高原雅之さん(36)が体験を話した。

 高原さんは、大学を卒業後、営業職やエンジニア職を転々とした。4社目で働いていたとき、上司との意思疎通や、チームワークでのコミュニケーションがうまくいかず、医療機関を受診。そこで初めて、注意欠如・多動症(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたという。その後、自分の特性への理解を深めて再就職。今は特性を生かしていきいきと働いているという。

 話すときに目を合わせるのが苦手だったり、疲れやすかったりする特性については、「相手の目から出てくる情報量が多くてまぶしく感じてしまう」「感覚過敏があり、満員電車にのると体力を消耗する」といった本音を紹介した。

「気づき」の声、続々と

 グループワークでは、「高原さんが採用候補に挙がってきたら……」とイメージを膨らませた。約1時間にわたる話し合いの中で、参加者からは「採用する側も、『こうあるべき』という前提を変えないと、その人本来の良さは出てこないのかもしれない」「オールマイティーに何でもできる人を求めがちだけれど、それぞれに得意なことがとがっている人を5人採用したら一つのチームができるのでは」などの「気づき」の声が次々と上がっていた。

 高原さんは「こちらのことを思ってくれていることが伝わってきた。脳の特性が違うひとりの人間として接してくれたらうれしいですね」と話していた。

 今回初めてワークショップに参加したという、医療系コンサルタント会社ユカリアの三沢英生社長は「ニューロダイバーシティを学ぶことで、社員全員のウェルビーイング(心身共に満たされた状態)が高まる。守りではなく攻めの経営戦略の一つとして、取り組んでいきたい」と話していた。

企業で働く5%が「グレーゾーン」

 この日本橋ニューロダイバー…

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