衰えを嘆かず「隙を埋める」 羽賀龍之介が歩む味わい深い柔道人生
野村周平
「五輪で金メダル」が最優先されてきた日本柔道界で、五輪から遠ざかった後も現役を続ける選手は何のために戦い続けるのか。29日に東京・日本武道館で行われる全日本選手権に出場する五輪メダリストに聞いた。
柔道人生の最終目標だった東京五輪の代表から落選した4年前、羽賀龍之介(32)=旭化成=は戦う意義を見失いかけた。
2016年リオデジャネイロ五輪の男子100キロ級で銅メダル。自身2度目の五輪で金メダルをとることが競技を続ける原動力だった。「五輪に出た人は、五輪じゃないと自分を奮い立たせられない」。そう思っていた。
新型コロナウイルスが広がって柔道と一時的に距離を置かざるをえない状況になると、自分と向き合う時間が増えた。「五輪が人生のすべてではない」と言い聞かせようとしたけれど、「結局、五輪がすべて」という本音を覆い隠すことはできなかった。ただ、コロナ禍でひっそりと引退するのは嫌だった。
20年12月に延期された体…