「24時間戦えますか」をやめるには 女性目線で考える選挙文化改革

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Stand by Women代表・濱田真里=寄稿
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 「女性議員を増やしたい」と言うと、「立候補したがる女性がいない」「適任者がいない」という言葉をよく聞きます。本当にそうでしょうか。

 3月に福岡県で開催された一般社団法人パリテ・アカデミー主催の「女性政治リーダー合宿」にファシリテーターとして参加して、あらためてそう思いました。

 立候補したい女性たちはいる。適任者もいる。女性議員が少ないのは、それ以外の理由が大きいのではと感じたからです。

選挙の疑似体験を通して

 パリテ・アカデミーは、上智大学の三浦まり教授とお茶の水女子大学の申きよん教授を共同代表として2018年3月に設立され、女性の政治リーダーを養成する取り組みを続けてきました。今回の合宿には、さまざまな社会課題に問題意識を持ち、政治という手段で何か変化を起こしたいと思う女性たちが参加。10代から60代の女性22人で最年少は17歳。韓国からきた人もいました。

 合宿では、初日に選挙の仕組みや効果的なスピーチの方法などを学び、2日目にはそれらの知識を総動員して、実際の選挙戦を想定した選挙戦略の発表を行いました。参加者は五つのチームに分かれ、くじ引きで候補者、キャンペーン・マネジャー、コミュニケーション担当、会計に役割分担。政策やスローガン、どのように選挙活動をするか考え、チームごとに発表して優勝チームを決めました。

 選挙の疑似体験をすることで、「意外と自分にもできそう!」とハードルが下がり、「こういう知識が必要だったんだ」との気付きもあります。参加者からは、「地域性を生かして選挙戦略を立てる必要性を実感した」「ターゲット層を明確にして、票読みをする方法などの学びがあった」など、実践に生かせる学びを得られたという感想が目立ちました。

 今回の合宿は6回目ですが、私は2019年に開催された第1回の合宿に参加した経験があります。この時にチームを組んで候補者役となった人がその後、国会議員になり、合宿で相部屋になった2人は立候補しました。パリテ・アカデミーでは設立から2023年までの期間に、31人が立候補して23人が当選しています。

 今回の参加者に立候補する意欲があるか聞いたところ、約3分の1がいつか挑戦したいとして具体的な選挙名を挙げました。私が着目したのは、立候補を検討していない人から、「メンバーから立候補する人が出たら、ぜひ応援したい」という意見が多く出たことです。実際、合宿の修了生が選挙で応援し合うのはよくあります。

ボランティアでも女性が少数派

 日本では政治家だけでなく、選挙ボランティアにも女性の数が少ないです。この点にも私は問題意識を持っています。地方で女性議員を増やすためには、候補者をサポートする人たちや、女性のボランティアを増やすことも必要だと考えるからです。

 議員からよく聞くのは、たとえば街頭演説に付き添ってくれる人が欲しいという声です。日本では駅や人の集まる場所に候補者や議員が立って、マイクをもって演説をすることがよくあります。その時、ひとりの人にずっと話しかけられて他の人を待たせてしまったり、演説ができなくなったりすることが起こりがちです。そんな時は、候補者の側から話を終わらせるのは角が立つため、周りのスタッフが間に入って「そろそろお時間です」などの声がけをして引き離すことが有効です。

 街頭演説中に暴言を吐かれたり、体を触れられたりするといったケースも多発しますが、そういう場面でも第三者の介入が効果的です。そのほか、選挙チームの中で、介入してほしい場面やつなげてほしくない人の情報を事前に共有しておくこともおすすめです。チームに女性がいると、こういった相談もしやすいという声を聞きます。

 私も選挙ボランティアを経験してきました。そのなかで感じたのは、これまで選挙活動が男性中心、男性目線で行われてきたためか、選挙のルールやそこで使われる言葉が、男性的なものが少なくないことです。

 たとえば、「出馬」「出陣式

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年4月26日13時0分 投稿
    【視点】

    2023年3月に、日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「私自身も1年365日24時間、寝ているときとお風呂に入っているとき以外、常に選挙を考えて政治活動をしている。それを受け入れて実行できる女性はかなり少ないと思う」と語った。 (https

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