村上文学の「聖地」芦屋の公園新しく サルのオリはなくなったけど…

森直由
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 兵庫県芦屋市で育った作家・村上春樹さん(75)のデビュー作に登場する「猿の檻(おり)のある公園」。このモデルとされる同市の打出(うちで)公園が、このほどリニューアルオープンした。サルのオリは撤去されたが、代わりに一部を再利用したモニュメントが設置された。

 市などによると、公園は阪神打出駅から北へ約150メートルの場所に1952年にできた。89年にはサルやリスなど8種類の動物がいたが、2003年に最後のサルが死に、10年春にはすべての動物がいなくなった。

 ただサルのオリ(縦約4メートル、横約5メートル)は、デビュー作「風の歌を聴け」に登場する有名な小説の舞台ということもあり、地元住民の要望で残された。

 公園はメディアなどで取り上げられ、村上さんの熱烈なファンが訪れる「聖地」に。

 村上さんの作品を中国語に翻訳したこともある神戸国際大学の毛丹青(マオタンセイ)教授(62)=日本文化論=はコロナ禍の前、取材で来日した中国人の雑誌の編集者や、デンマーク人の村上作品の翻訳家らを公園へ案内したという。

 遊具の老朽化などに伴い、オリは昨年7月から始まった公園の改修工事で撤去。幅約90センチ、高さ約1・9メートルのモニュメントが新設された。

 サルのシルエットに「村上春樹のデビュー小説である『風の歌を聴け』の一場面に描かれたことでも有名です」などと記されている。QRコードをスマートフォンで読み込むと、公園の歴史の詳しい説明が読める。

 村上作品に詳しく、地域史を調べている西宮芦屋研究所の小西巧治さん(75)は、公園の入り口に「おさるこうえん」と書かれた看板が新たにつくられたことに注目。「当初はオリを残すべきだと思ったけれど、看板やモニュメントを見て、作品の舞台となったことが分かりやすいと思った」と評価する。

 毛教授も「村上作品を語り継いでいくのに十分な公園だと感じた。村上さんのファンの外国人観光客にもぜひ訪れてほしい」と期待している。(森直由)

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