無邪気な首相演説 「日本は我々と一緒に戦ってくれますよね?」

有料記事政治Plus

政治部次長・園田耕司
[PR]

 今回の岸田文雄首相訪米のハイライトは、やはり米議会上下両院合同会議での演説だろう。安倍晋三元首相以来2人目となる首相は、「『自由と民主主義』という名の宇宙船で、日本は米国の仲間の船員であることを誇りに思う」と、中ロから挑戦を受ける国際秩序の維持に努める米国の指導力をたたえ、「日本は米国のグローバル・パートナーだ」「米国は独りではない。日本は米国と共にある」と訴えた。米議員たちから総立ちの拍手を受けた首相が、満足げな表情で議場内をゆっくりと見渡す姿はとても印象的だった。

 先日、ワシントン特派員当時の旧知の米政府関係者がたまたま来日していたので、一緒に都内でコーヒーを飲んでおしゃべりをした(この人物の名前は仮にA氏としておこう)。A氏は首相の議会演説も現地で聞いていたので、感想を聞いてみた。

 するとA氏は一瞬、顔を曇らせ、「日本の立場からすれば憂慮するべき内容だったと思う」と語る。強固な日米同盟構築のために両政府間を忙しく行き来するA氏のことだから、てっきり「素晴らしい演説だった」などと米議員らと同様に首相を持ち上げる反応を予想していたので、意外に思い、どういうことかと尋ねると、こんなエピソードを語ってくれた。

 首相の演説が終わったあと、A氏は日本の外務省関係者からも感想を聞かれた。A氏はこう伝えたという。

 「素晴らしい演説だったと思うけど、首相があの演説をしたということは、米国がこれから戦争を始めたら、日本は当然、我々と一緒に戦ってくれますよね?」

 A氏の言葉に外務省関係者は「えっ」と絶句し、「いやいや、それとこれとは別の話で……」と言い訳を始めたという。

 A氏は私にこう解説する。

 「考えて欲しい。首相のスピ…

この記事は有料記事です。残り3316文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    佐橋亮
    (東京大学東洋文化研究所准教授)
    2024年4月20日17時17分 投稿
    【視点】

    一つのアメリカ人の考えをもって、総理演説が日本の際限のない軍事コミットメントを示しているような解釈があたかも主流説のように扱うことはできません。ウクライナに対しては資金提供の話をしているだけであり、中東に関しては共同声明にあった内容(パレス

    …続きを読む