130年の眠りから覚めた藤原定家の自筆の書物 迫力、原本ならでは

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編集委員・中村俊介
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 「文書の正倉院」とも言われる冷泉家の蔵の奥深くに、国宝級の書物が眠っていた。時代を代表する歌人にして古典研究の大家、藤原定家が自筆でしたためた古今和歌集注釈書の原本だ。専門家からは「これほどのものがあったとは」と驚嘆の声が漏れる。

 失われたと信じられてきた「顕注密勘(けんちゅうみっかん)」は上中下3冊。飾り気のない木箱に収められていた。冷泉家時雨亭文庫の冷泉為人理事長によれば、かつては歴代当主が一生に一度開けて秘伝を受け継いできたという。しかし明治の開封を最後にひっそりと保管され、約130年の年月は原本の存在を忘れさせてしまった。

 10世紀初めの古今和歌集は日本の美意識の根幹とされ、「源氏物語」など国文学にも大きな影響を与えた。だが、時を経るとともにわからなくなった意味やニュアンスもあり、「成立から300年ほどたった当時の歌人が、その意味を確かめようとした集大成が顕注密勘だ」と、同文庫調査員で京都産業大の小林一彦教授はいう。

 それだけに、写本にない原本…

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