「復興か移住か」元新潟知事が問う難問、復興を果たした山古志の葛藤

有料記事8がけ社会

笹山大志
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A-stories 8がけ社会と大災害(5)

 能登半島を震度7の地震が襲った1週間後、元新潟県知事立憲民主党衆院議員の米山隆一氏がX(旧ツイッター)に投じたメッセージが、大きな波紋を広げた。

 「人口が減り、地震前から維持が困難になっていた集落では、復興ではなく移住を選択する事をきちんと組織的に行うべきだ。日本の人口動態で全てを旧に復することはできない」

 投稿は瞬く間に8千件近く「リポスト」され、閲覧数1千万を超えた。

 米山氏は続く投稿で、その意図を説明した。

 「人の少ない集落での暮らしは、高齢者には厳しい。買い物や病院、介護も人口が集積している方がはるかに楽。本人たちの生活も楽になり、行政コストも減る」

 投稿への反応を追うと、「故郷を捨てろでいいのか」「常軌を逸した非常識さで傲慢(ごうまん)」との批判や反発の声があった。

 一方で「過疎地に実家のある身としてはとてもわかる」「言い難いことをよく言った」と評価する声も相次いだ。明治大教授の飯田泰之氏も「旧集落のコミュニティを保ち、文化と祭祀(さいし)を保ち、移転先に存続することに希望を託すことは状況を放置してその全てを失うよりも希望ある選択と感じます」と、投稿を前向きに引用した。

連載「8がけ社会」

 高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。そんな未来を先取りする能登半島での地震は、どんな課題や教訓を示しているのでしょうか。4月14日から配信する8本の記事では、8がけ社会と大災害に焦点をあて、災害への備えや復興のあり方を考えます。

 SNS分析ツール「ブランドウォッチコンシューマーリサーチ」を使って投稿の反響を分析すると、投稿に肯定的な反応は6割に及び、否定的な反応は1割にとどまった。

「復興とは何か」米山氏が明かした真意

 米山氏の真意はどこにあるのか。

 1月下旬、東京・永田町の衆…

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    永田豊隆
    (朝日新聞記者=貧困、依存症、社会保障)
    2024年4月18日17時34分 投稿
    【視点】

    20年以上前、九州地方の山間部で、ごみ処分場計画に反対する住民運動を取材したことを思い出します。平均70歳を超える住民らは文字どおり体を張って、工事業者らの立ち入りを拒んでいました。 計画の是非は別にして、その気迫に圧倒されると同時に、自分

    …続きを読む