川でのサケ漁「アイヌ民族の先住権」との原告主張、退ける 札幌地裁

上保晃平
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 アイヌ民族が生業としていた地元の川でのサケ漁は集団に固有の権利だとして、北海道浦幌町のアイヌ団体が国と道を相手取り、漁業権があることなどの確認を求めた訴訟の判決が18日、札幌地裁であった。中野琢郎裁判長(小野瀬昭裁判長代読)は、固有の文化を享有する権利(文化享有権)があるとし、サケ漁は最大限尊重されるべきだが、排他的な漁業権を認める法的根拠はないとし、請求を退けた。

 判決は、アイヌ民族は遅くとも江戸時代以降、地元の川でサケ漁を行い、サケを「カムイチェプ」(神の魚)と呼んでおり、「サケ漁はアイヌの生活、伝統、文化などにおいて重要」と認めた。幸福追求権を定めた憲法13条に基づき、アイヌ民族には文化享有権があり、最大限尊重されるべきだとした。

 ただ、サケ漁を含めた漁業権は、財産権の側面が強いと指摘。河川は排他的な支配が許されない公共物であり、アイヌ民族の歴史的な経緯や伝統を踏まえても「(漁業権は)文化享有権の一環、または固有の権利として認められない」とした。

 水産資源保護法などで、アイヌ民族に限らず、川でのサケ漁が原則禁じられていることについても「サケ資源の枯渇を防ぐため、規制には合理性がある」と指摘。現行の法制度は、例外としてアイヌ民族が文化を伝承、保存するためのサケ漁を認めており「文化享有権に対する不合理な制約とまで解することはできない」と結論づけた。

 原告弁護団の市川守弘弁護士は「判決は、経済活動を含めて『文化』とする国際的な理解に反している」と話した。(上保晃平)

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