サヘル・ローズさんが語る「危険地」に赴く意味 もっと伝えるには

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聞き手・岡田玄
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 日本では最近、戦場や紛争地など危険な地域での取材に冷ややかな視線が向けられるようになった。難民キャンプなどを訪ね、現地の状況を発信している俳優・タレントのサヘル・ローズさんは、この状況をどう見ているのか。話を聞いた。

自分の目で見て知った現実

 ――今年2月、アフリカのウガンダに行ったそうですね。

 「はい。支援団体の協力が得られ、現地を訪れることができました。ウガンダの周辺では長年、紛争や衝突がくり返され、混乱が続いています。今回訪れたチャングワリ難民居住地には今も13万人以上が暮らし、まるで一つの村というか、町のようでした」

 「私自身、裕福な環境で育ったわけではありません。イランで生まれて、幼少期は孤児院で育ち、7歳で引き取ってくれた養母とともに日本へ来ました。一時期は公園で夜露をしのぐなど、貧しい暮らしも経験していますが、そんな私でも驚きました。こんな貧しさがあるのか、と。貧困には程度、グレードがあるのだと初めて感じました」

 「難民居住地では、ほとんどの子どもが裸足でした。だから、すぐにけがをする。その傷口から病気になるけれど、薬を買うお金もありません。支援をしようにも、数が多すぎて全員を平等に救えないことも……。つらいけれど、選ばなければ支援ができない現実があるということも知りました」

 「もう一つ、私が知ったのは、自分の中にある差別的な心でした。難民居住地の子どもたちとふれあう中で、握手もハグもしました。でも、心の中で不安になり始めるのです。感染症とか大丈夫だろうか、って。私は車に戻って自分の手を消毒したのです。自分のことが本当に大嫌いになりました。どんなに意識していても、人は自分を守ろうとしてしまう、私は差別している、と」

 ――ある意味では仕方がない気もします。それも、行かなければ気づけません。

危険地報道をめぐる悪循環

 「選ばなければ支援できないと言いましたよね。ジャーナリストも同じなのではないかと思います。誰を、何を、報じるのか。そこで起きている現実のすべては報じられないから、選ぶしかありません。でも、今の日本では、こうした紛争地や危険な地域を報じること自体が減っていると感じています」

 「そもそも、アフリカと言えば、貧困や紛争というイメージが一般的だと思います。実際、そうした面もある。でも、私が現地に行って最初に目を奪われたのは、緑や赤などの原色の鮮やかさと人々の活気でした」

 記事の途中で、インタビューに答えるサヘル・ローズさんの動画もご覧いただけます。

 「現地からの報道が少ないか…

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