「還暦以上は口出さず」道空けた町長、若者描いた被災地の未来と希望

有料記事8がけ社会

中山直樹 笹山大志
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A-stories 8がけ社会と大災害(6)

 元日に震度6強の揺れが襲い、100人以上が犠牲となった石川県珠洲市。地震から1カ月半が経ったある日、市内の神社に老若男女の50人が集まった。

 「これからの珠洲の話してみんけ?」

 こう呼びかけたのは、珠洲市出身の大学生安宅佑亮さん(23)。元日は中国・上海に留学中だったが、地元の惨事に4日後に帰国した。

 発災前の市の高齢化率は50%超。そこに襲った地震で住宅の約6割が全半壊となった。市外への避難で人口流出はさらに加速していくとみられていた。とりわけ復興の担い手である現役世代の減少が避けられない中で、まちの未来をどう描けばいいのか、誰もが途方にくれていた。

 安宅さんは、避難所の運営や銭湯の復旧を手伝ううちに、県外からボランティアに来ていたNPO職員から、若い住民が主体となって震災復興を成し遂げた町が東北にあると聞いた。

 強く引きつけられたのは、その町の合言葉だった。「これからのまちづくりに還暦以上は口を出さない」

 珠洲の復興に向けたヒントを探りに、東北のその町に向かった。

連載「8がけ社会」

高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。そんな未来を先取りする能登半島での地震は、どんな課題や教訓を示しているのでしょうか。4月14日から配信する8本の記事では、8がけ社会と大災害に焦点をあて、災害への備えや復興のあり方を考えます。

きっかけは、震災9日後の会長の言葉

 東日本大震災の地震と津波で人口の約1割が犠牲になった宮城県女川町。震災から13年を経て、町の顔つきが一変した。

 女川湾が一望できる町中心部…

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