「中華民国」は言い間違い? 北京訪問にこだわった馬英九氏の悲劇

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論説委員・村上太輝夫=国際社説担当
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 台湾の前総統、馬英九氏が北京で習近平(シーチンピン)・中国国家主席と会談した。馬氏が「中華民族」と言うべきところ「中華民国」と言い間違えたという。

 中華民国の政権党である国民党を打倒して中華人民共和国をつくったのが共産党だ。国民党の撤退先の台湾は国家統一への最後のピースである。これに対し国民党は今なお、失った大陸を含め中華民国であるとする。一方、今の台湾で国民党と対峙(たいじ)しつつ政権を担う民進党は、中華民国を名乗るが実際は台湾及び周辺の島々からなる独立国家だ、との立場だ。

 3党鼎立(ていりつ)の中で、国共両党は台湾を含めて「一つの中国」だ、という点では一致できる。これをよりどころに国民党の馬政権は2016年まで8年間、良好な中台関係を維持した。

 だが共産党からみれば中華民国はとうに消滅したことになっている。国共の関係は、そこを突き詰めないことで保たれる。だから習氏の面前で馬氏が「中華民国」と言えるはずもなく、言い間違いとして口にするのがせいぜいだった。何も言わない方がましだったのではないか。

 共産党の狙いははっきりしている。

 習馬会談で「一つの中国」を…

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