第9回韓国を突き放し、日本には揺さぶり 北朝鮮の思想体系を読み解く

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 北朝鮮は昨年末から、平和統一政策の放棄を強調するなど、韓国を突き放しています。一方、日本には揺さぶりをかけるなど、はたからすると、一見わかりにくい行動をとっています。北朝鮮内部の思想体系はどうなっているのでしょうか。元公安調査庁の坂井隆さんに、金日成(キムイルソン)主席、金正日(キムジョンイル)総書記、そして現在の金正恩(キムジョンウン)総書記と続く3代の思想の変遷について聞きます。

 〈箱田〉北朝鮮といえばかつて、主体(チュチェ)思想という考え方がよく言われました。これは私たちにもわかりやすく言うと、どういった思想なのでしょうか。

 〈坂井〉要は「他人から言われて受け身にではなく、自分自身の考えで能動的に動く」という考え方です。

北朝鮮ウォッチャー・坂井隆さん

1951年生まれ。78年に公安調査庁に入庁し、ひたすら北朝鮮をウォッチし続けてきた。2012年に退官後も独自に分析を進め、その手腕は専門家らの間でも高い評価を得ている。共著に「独裁国家・北朝鮮の実像」(17年、朝日新聞出版)など。

 〈箱田〉主体思想はいつごろ生まれたのですか。

 〈坂井〉最初にまとまった形で示されたのは1965年4月、インドネシア訪問中の金日成氏が「思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛」を、「我が党が一貫して堅持している立場」として主張したときとされています。

 その後、朝鮮労働党内で金日成氏を「首領」とする独裁的な指導体制が固められる過程で、67年、「唯一思想体系」というのが確立されました。

【連載】北朝鮮インサイト

核・ミサイル開発に邁進し、日本にとってやっかいな隣国・北朝鮮。この国は実際どうなっているのか。40年以上にわたり、北朝鮮を分析してきた元公安調査庁幹部の坂井隆さんによる、プロフェッショナルの見方をお届けします。

 〈箱田〉何が唯一なのですか。

 〈坂井〉金日成氏の考えだけ…

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