「地位ある昭和生まれの男」と舌禍 変わる社会常識に適応するには

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■経済季評 慶応大学教授・坂井豊貴さん

 川勝平太氏が静岡県知事を辞職することになった。川勝氏は新入職員への訓示で「野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノをつくったりということと違って、皆様は頭脳、知性の高い方です」と述べた。これが差別的な発言だと強い非難を受け、辞職に至ることになった。私も川勝氏の発言は度を越して失礼だと思う。そしてこのような事態になったことを残念に思う。

 川勝氏は、元は比較経済史の学者だ。海洋交流が日本文明の発展に果たした役割を強調する「海洋史観」を提唱し、言論人としても名を馳(は)せた。私自身も学生のとき氏の著書「文明の海洋史観」を読み、深い感銘を受けた。知事としての評価には毀誉褒貶(きよほうへん)があろうが、学者としてはトップスターであった人で、いまも私はここで川勝先生を「川勝氏」と書くことに抵抗がある。

さかい・とよたか 1975年生まれ。慶大教授。米ロチェスター大博士。専攻はメカニズムデザイン。主著に「多数決を疑う」。

 なぜこんなことになったのか。川勝氏の見識の問題と、舌鋒(ぜっぽう)鋭い言葉選びのセンスが、悪い形で結び付いたのは確かである。だがいかに見識に問題があり、舌鋒が鋭くとも、あのような発言が強い非難を招くと分かっていれば、口には出さなかったはずである。

 昔と比べるといまは、不見識…

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