熊本県の旅行助成金、不適切受給は「なかった」 調査委が公表

渡辺淳基 森北喜久馬
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 熊本県の旅行支援事業を巡り、助成金が不適切だった可能性があるなどと公益通報があった問題で、県が設置した第三者調査委員会は11日、不適切な受給も県幹部による見逃し指示もなかった、とする調査結果をまとめた。一方、担当者間の情報共有に問題があったとして、県に改善を求めた。

 旅行支援事業は、県がコロナ禍の旅行業界を支援するため2021年3月にはじめた事業「くまもと再発見の旅」。昨年9月、TKUヒューマン(熊本市)が販売した日帰り旅行商品には、助成対象外の疑いがあったのに、県は問題を指摘せず、助成金約2千万円が同社に支払われたままになっていると通報があった。さらに「県幹部が見逃しを指示した」と訴えていた。

 報告書は同社への助成について、「要件を満たさないとは言えず、不適切な受給自体がなかった」と判断。一方で、県幹部が同社から要望を受けたかのように職員に伝えたことが「企業に忖度(そんたく)して事実を調整するように指示されていると受けとられかねない発言」として、県の対応に問題があったなどとした。

 また、県の担当者間で制度の理解が統一されないまま運用されたことが、問題の背景にあると指摘した。調査委の委員長代理を務めた渡辺絵美弁護士は記者会見で「(県内部で)人によって理解がばらばらだった」と話し、決定過程の文書化に努めるなど県に業務の改善を求めた。

 報告書を受け取った蒲島郁夫熊本県知事は「不適切受給、幹部の見逃し指示、県民の損害のいずれも無かったという結論だった。一方で、受給要件の決定や、旅行業者の名誉回復について指摘を受けた。真摯(しんし)に受け止め対応を検討していく。調査を第三者委員会にお任せして良かった」と話した。

 TKUヒューマンの担当役員は取材に対して「第三者調査委員会の調査によって、TKUヒューマンが旅行事業法に抵触するなどの不適切な受給がなかったことが証明されたと認識している」と話した。

 通報者は取材に、「旅行業者にはマニュアルに明記して指導をしており、第三者委の調査は前提に誤りがある。結論ありきという印象を受けた」と話した。渡辺淳基、森北喜久馬)

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