第4回時速15キロのモビリティスクーターを国内でも 離島から始めた戦略

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 海を見下ろす緩やかな坂道を、白いチョウが2、3匹舞う。

 そこを、電動車椅子をレース仕様にしたような車両が、すべるように上ってきた。

 3月14日、沖縄県の離島にある伊江村で「モビリティスクーター」と呼ばれる車両の試乗会があった。台湾・ハートウェイ社の「S23」を日本の公道向けに一部改修したものだ。

 自動車の運転をあきらめた高齢者らの新しい移動手段として、今年新たな車両がまずは伊江村から走り始める――。そんな構想を聞き、フェリーで島に渡った。

 人口4200人あまり、4割近くが65歳以上という。フェリーの発着にもあわせ、1日に6便走る路線バスが島内の代表的な公共交通機関だ。

時速15キロ、運転免許は必要

 S23は最高時速15キロ。「ミニカー」という区分でナンバー登録され、乗車には運転免許がいる。ただ、ヘルメットの着用は義務付けられない。現在、国内には試験車両が3台あるだけだ。

 この日午後、ヤマハのバイクなどの販売・修理を取り扱う「タマキボディー」の前に集まった顧客の島民たちが、代わる代わるS23に乗り、近くの道をぐるっと回った。

 時速15キロは、自転車で平地をリラックスして走る感覚に近い。

 試乗した中真三紹(みつあき)さん(75)は「これならそこそこスピードも出る。買い物とかゲートボールとか、村のどこへでも行けそうだ」と言った。

 バイクや農作業機械などを修理する工場に勤め、いまも車に乗る。ただ、いずれ運転をやめることも考えなければと思っている。

 そのときに想定される移動手段はシニアカーと呼ばれる電動車だ。しかし、こちらは最高時速6キロ。車からいきなりシニアカーはちょっと落差が大きすぎると思っていた。「人それぞれだけど、僕個人にとってはね」

 タマキボディー社長の玉城(たましろ)孝さん(65)によると、村内で運転をやめた高齢者が典型的に利用するのがシニアカーだ。

 65歳以上の免許返納者らが、シニアカーを含む電動の三輪または四輪車を購入する際、村から補助金が出ることもあって、村内には電動車椅子とシニアカーが計約150台ほどもあるという。

 確かに、2時間ほど村内を巡るだけでシニアカーが走るのを4、5台は見た。ふだん勤務する東京近辺で、これだけの頻度で見た記憶はない。

 試乗会を主催したのは沖縄ヤ…

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