偽物探しで見つかった「とんでもない中身」 中世の史料の数奇な運命

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今井邦彦
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 室町時代の1485年、「応仁の乱」の終結後も南山城(今の京都府南部)で内紛を続ける畠山氏を、地元の国人(地域の有力武士)らが結束して追い出した「山城国一揆」。これまで地元にもなかった一揆前後の様子がうかがえる同時代史料が、奈良県平群町所蔵の古文書から見つかり、9日発表された。

 だが、この史料を伝えたのは、偽書として有名な「椿井(つばい)文書」の出どころである椿井家。果たしてこの史料は本物なのか? それとも偽物? そしてなぜ奈良に?

 椿井文書は江戸時代後期、南山城に住む椿井政隆(1770~1837)が中世の文書や絵図を偽装して創作した文書群だ。政隆は土地や水利を巡る争いの場に現れ、一方の主張に有利な偽文書を作成して提供した。

 そこに登場する人物の系図や連判状、古地図といった関連文書もまるごと偽作して信憑性(しんぴょうせい)を高めていたという。

 こうした文書は近畿各地の市町村史で中世史料として扱われていたが、2020年に馬部(ばべ)隆弘・中京大教授が著書「椿井文書」(中公新書)で偽書であることを紹介し、広く知られるようになった。

新史料「目を通し、すぐに気づいた」

 椿井家は中世から続く南山城…

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    今井邦彦
    (朝日新聞記者=歴史、考古学)
    2024年4月11日11時51分 投稿
    【解説】

    若干、記事では触れきれなかったことを補足させていただきます。 今回のニュースを巡って、SNS上で「本物の椿井文書」という言葉が散見されました。この成果を発表した馬部隆弘・中京大教授は、4年前に著書「椿井文書」(中公新書)で、椿井政隆(17

    …続きを読む