「電子マネー誰かに買うように言われた?」詐欺防止でコンビニと連携

小幡淳一
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 電話などで信頼させ、現金を振り込ませたり、電子ギフト券を購入させたりする特殊詐欺の被害が後を絶たない。信じ切った被害者はコンビニエンスストアに駆け込むケースが多く、岩手県警は被害防止対策としてコンビニとの連携強化に乗り出している。

 盛岡市厨川5丁目のローソン盛岡大学附属高校前店で8日午後、特殊詐欺被害防止の声掛け訓練が行われた。16万円分の電子ギフト券を購入しようとした男性に対し、女性店長(53)がカウンター越しに目的を聞いた。

 「パソコンが(ウイルスに)感染して……。券を買って番号を教えてくれって言われたんです」と困り顔の男性。すると、店長がシートを取り出した。

 「あなたは、誰かに電子マネーを買うように言われていませんか?」と大書きされている。その下には「○」「×」とあり、指さす仕組みだ。

 男性が「○」を示すと、店長がすぐに裏返した。赤字で「詐欺の可能性があります」。警察へ通報することなども明記されており、店長は「用途がわからない電子マネーは販売できません」と告げた。

 続いてATMの前で行われた訓練では、電話で話しながら操作する男性に対し、様子を見ていた店長が近寄って声を掛けた。「誰かに頼まれたのですか」。返事に困った男性は、結局、店長の説得に応じた。

 この店ではこれまで店員の機転で詐欺の被害を未然に防いだこともあった。店長は「相手の勢いにのまれないように、とにかく話をよく聞くことが大切」と話していた。

 県警は客側が意思表示しやすいように「○×方式」のシートを考案。1300枚を作成し、県内のコンビニに配布し、活用の協力を呼びかけている。

 実際に詐欺が疑われる場合、店は県警に通報し、客が帰らないようにとどまらせる。警察官は客から振込先ややりとりの内容を聞き、犯人の特定に向けて捜査に乗り出す。万が一、振り込んでしまった場合は引き落とされないように口座を凍結する。

 ただ、客が詐欺の話を信じ切って聞く耳を持たず、被害に遭ってしまうことも起きている。そのため、県警は高額購入は通報を要請しているという。

 一方、岩手署では独自の対策も進めている。警察官が定期的にコンビニに立ち寄り、注意喚起や手口の情報などを伝える「コンビニサポートポリス」を導入。日ごろから店員と顔を合わせ、店が相談や通報をしやすい関係を築いている。

 警察庁のまとめ(暫定値)によると、特殊詐欺事件は増加傾向にある。全国で昨年1年間の認知件数は前年より1463件増の1万9033件に上り、過去10年で最多を記録した。被害額は441・2億円(前年比70・4億円増)、摘発件数は7219件(同579件増)。岩手県内では昨年24件の被害があり、計5千万円がだまし取られている。

 県警の佐々木亜貴子特殊詐欺対策室長は「コンビニと連携を強化し、対策を進めていきたい」としている。(小幡淳一)

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