車いすインフルエンサーが映画館で望む未来 悔し涙からの話し合い

有料記事Re:Ron発

聞き手・畑山敦子
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バリアーをなくすのは誰か① 車いすインフルエンサー中嶋涼子さん

 「車いすインフルエンサー」として活動する中嶋涼子さん(37)が3月、愛用する映画館でサポートを求めた後に起きた出来事を「久々に悔しい気持ちになった」とSNSで投稿したところ、「クレーマー」などと批判や誹謗(ひぼう)中傷を受けました。折しも、障害のある人の生活を制限するバリアーをできる範囲でなくす「合理的配慮」について民間事業者への義務化を目前とした時期。

 車いすでも、誰でも「見たい時に見たい映画館で見たい映画を鑑賞できる」場所ができたらうれしいです――。

 そんな発信もした中嶋さんに、映画館で起きたことを通して考えたこと、社会に伝えたいことを聞きました。

 ――「久々に悔しい気持ちになった」と投稿した、映画館での出来事は。

 公開前から楽しみにしていた映画「52ヘルツのクジラたち」を見に行きました。仕事が休みで行けたその日、よく行く東京・調布の「イオンシネマ」では車いす席のあるスクリーンではやっていなくて、「グランシアター」というゆったりしたサイズのシートがある席にしました。

 その席に行くには4段の階段があり、上映前と後に車いすを持ち上げてもらって上り下りしました。ただ、上映終了後にスタッフから、人員に限りがあり、安全面も考えると、今後はグランシアター以外の劇場(スクリーン)で見ていただいた方がお互いに気分がいいのでは、といったことを言われました。グランシアターで見るのは4度目で、毎回上り下りを手伝っていただいたことも伝えましたが、「対応したことはない」と言われたのもショックでした。なぜ急に拒否されたのか、その場は何も言えず、一人になって涙が出ました。

4月から民間事業者にも義務化された合理的配慮。特集「バリアーをなくすのは誰か」では、障害のある人の生活や社会参加を困難にするバリアーの解消に何ができるか、インタビューや寄稿で考えます。随時配信します。

 ――「イオンシネマの社長と話し合いたい」とも投稿されました。

 映画が大好きなので、映画館での否定的な対応が悲しかったんです。

 最初から難しいと断られるのではなく、何かほかに対応してもらえるか映画館を運営する人ときちんと話し合いたい、思いを伝えたいと思いました。

 何か言われるだろうと覚悟はしていました。

 でも、「クレーマー」「特別扱い」で配慮を求めているといった声など、これほど炎上するとは思いませんでした。私の投稿の書き方では映画館自体が利用できないように受け取られた人もいて、言葉足らずだったと反省し、3月29日に新たに経緯と対応の報告を投稿しました。映画館を運営するイオンエンターテイメントは謝罪文を出されましたが、その後に話し合って、どのような対応があったらうれしいかを伝え、検討していただけることになりました。

「『当たり前』と思っていないか」という声に

 ――改正障害者差別解消法の施行で4月から「合理的配慮」が民間事業者にも義務化されました。合理的配慮とは、障害のある人が日常や社会生活を送る上でさまたげになる社会的障壁をとりのぞくために、状況に応じて行われます。そうした配慮につなげるために「話し合いたい」という思いがあったのでは。

 合理的配慮ってなんだろう…

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