バイオ×AIでものづくり マンチェスター大の高野惠理子教授に聞く

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瀬川茂子

 新しい生命システムを創造する「合成生物学」が注目を集めている。最近はより応用を重視した「エンジニアリングバイオロジー」とも呼ばれる。バイオ技術やAIの急速な発展により、「ものづくり」が変わる可能性があるのか。英マンチェスター大の合成生物学研究拠点長の高野惠理子教授に聞いた。

――合成生物学とは。

 バイオ技術は前からありましたが、新しく「システム」を設計することが目的です。食品、医薬品、化学物質などを作ったり、環境中の毒物を分解したり、さまざまな応用が考えられています。

 従来は石油から作っていた燃料や材料を、生物から作る「バイオものづくり」を進める動きもあります。環境に優しく、持続可能なものづくりで、経済活動と社会課題の解決をめざします。

 英国では政策として、重点的に研究を進める5分野の一つに合成生物学が選ばれています。他は、AI、通信、半導体、量子技術になります。昨年末、合成生物学に対する政策や規制改革の方向性をまとめた報告書が発表され、10年で20億ポンド(約3800億円)の投資が決まりました。

――システムの設計は、従来の遺伝子工学とどう違うのですか。

 医薬品となるたんぱく質を作る遺伝子を微生物に組み込んで作らせる応用などは非常に進んでいます。でも、その方法はもっと効率よく作りかえることができます。

 たとえば、微生物がABCという遺伝子を利用していたとして、Aを改変してA’にしたら、もっと効率がいいかもしれません。さらにAをやめてDCでもできるかもしれません。自然をまねるのではなく、人為的にDNAの配列を設計(デザイン)するのです。

 似たような配列の遺伝子はたくさんあります。遺伝子は単独で働くのではなく、遺伝子にスイッチを入れる配列などもあり、その組み合わせの数は多大です。

 すべてのパターンを実験で確認することはできないので、計算科学の専門家が効率がよくなりそうな設計を予測します。

AIとの融合がカギ

 オートメーションで実験したら、その結果を解析して、さらに効率を上げる方法をAIで探り、また設計に戻ります。DBTL(デザイン、ビルド〈作製〉、テスト、ラーン)と呼ばれるサイクルを何度も回して、最適な方法を探ります。

――AIとの融合が重要なんで…

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