小野竹喬の「波切村」が国重文に 近代日本画の新しい姿を探求

小沢邦男
[PR]

 岡山県笠岡市出身の日本画家文化勲章受章者の小野竹喬(1889~1979)の風景画屛風(びょうぶ)「波切村(なきりむら)」が、国の重要文化財(絵画)に指定されることになった。近代を代表する日本画家の若き日の大作。日本画の風景表現において重要な位置を占める作品と評価された。

 3月15日に国の文化審議会が、文部科学相に指定を答申した。

 波切村は二つの屛風に描かれた作品で、いずれも縦約168センチ、横約369センチ。現在の三重県志摩市の港を舞台に、屛風の右に穏やかな朝、左に荒れた夕方の波模様をそれぞれ描いた。竹喬ら若手画家5人が旧態依然とした官展に反発して1918(大正7)年に設立した「国画創作協会」(国展)の第1回展で発表された。

 竹喬は当時29歳。東洋古美術や西洋近代絵画に学びつつ、日本画による風景表現の方向性を探求していた時期だった。西洋の油絵を思わせる明るく雄大な景観描写は、その成果として記念碑的な自信作と位置づけられる。

 作品は笠岡市立竹喬美術館が所蔵。柴田就平学芸員は「四曲一双の迫力ある大作で、国展という新たな出発への強い思いが伝わってくる。国展の活動は10年ほどだったが、近代日本画の新たな可能性を探った重要な作品として評価されたのでは」と受け止める。

 同館では企画展「国画創作協会の画家たち」(前期)を開催中。波切村は5月25日から始まる後期展で公開される。

     ◇

 文化審議会は倉敷市の由加神社の拝殿・幣殿(へいでん)など敷地内の3件を登録有形文化財(建造物)に登録するよう答申している。(小沢邦男)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら