「決勝で会おう」被災地への思い誓った2人の主将、選抜がつないだ絆

小崎瑶太 斎藤孝則 田中祐也
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 (30日、第96回選抜高校野球大会準決勝 健大高崎5―4星稜)

 「必ず決勝で会おう」

 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県から第96回選抜高校野球大会に出場した星稜の芦硲(あしさこ)晃太(3年)と、日本航空石川の宝田(ほうだ)一慧(いっけい)(3年)の両主将が大会前に交わした約束だった。30日の準決勝で星稜は4―5で健大高崎(群馬)に敗れたが、2人の絆はこれからも続く。

 親しく言葉を交わしたことはなかったという2人は、組み合わせ抽選会を機に仲良くなった。抽選の結果、決勝まで対戦しないことになった。戦えるよう「一戦一戦がんばろう」と話した。

 以来、開会式前の時間など2人で話す機会が増えた。宝田主将は、星稜が仲のよいまとまったチームと感じ「自分たちは初めバラバラだったので、各チームの色があるなと思った」。それを聞き芦硲主将は「新鮮な気持ち」と話したという。

 「どうやってチームをまとめるか」など、話は盛り上がった。大会が始まってからはLINEでのメッセージのやりとりも増えた。

 日本航空石川は25日の1回戦で接戦の末に敗れた。

 この大会だけは本当に、星稜に優勝してほしい――。宝田主将は思いをこめて「優勝してくれ」と芦硲主将にメッセージを送ると、芦硲主将は「任せて。同じ県のライバルとしてがんばっていこう」と応じた。同じ日、星稜は2回戦を勝った。選手らは「石川県、負けんぞ!」とベンチで声を出していた。宝田主将は「自分たちの思いも感じて戦ってくれた」。

 星稜の準決勝敗退を、宝田主将はテレビで見ていた。試合直後「お疲れ」と芦硲主将に送った。

 「優勝できなかった、ごめん」。芦硲主将の返事には、約束に応えられなかった悔しさがにじんだ。宝田主将は石川を背負ってくれた感謝をこめて、一言返した。

 「ありがとう」

 大会中、両チームの選手らは「被災地への思い」を尋ねられることが多かった。芦硲主将は「負担ではなかった。応援してくださることで気分も上がり、本当に感謝」と語り、宝田主将は「力に変えて頑張ろうと、チームと話していた」と振り返る。

 チームは違えど、それぞれの思いで、白球を追いかけた。

 夏の選手権大会。今度は1チームしか甲子園に行けない。2人は新しい約束を交わした。

 「頂点を目指して、お互い頑張っていこう」(小崎瑶太、斎藤孝則、田中祐也

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