報徳学園の二枚看板は「親友」 性格は正反対、目標は同じ「日本一」

室田賢
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 (31日、第96回選抜高校野球大会決勝 健大高崎3―2報徳学園)

 ベンチで汗を拭く報徳学園(兵庫)の先発・今朝丸裕喜に、ブルペンから帰ってきた間木(まき)歩は声をかけた。

 「まっすぐで、強気でいけよ。攻撃で点を取ってくれるから、安心して投げろよ」

 今朝丸は「おう」と短く答えた。

 報徳学園(兵庫)の二枚看板は、互いの存在が成長の源になっている。

 コントロールと変化球で翻弄(ほんろう)する技巧派の間木。最速151キロを誇る本格派、今朝丸。今大会は背番号は間木が「1」、今朝丸が「10」をつける。

 大角健二監督は「正直、どっちが背番号1番でもいいかなって思えるような2人です」。

 ともに兵庫県出身。間木は陽気で発言力が強く、今朝丸はおっとりしていてマイペース。先に頭角を現したのは、今朝丸だった。身長188センチから繰り出す直球を武器に、2年春の県大会でエースナンバーを背負った。

 今朝丸の投球を見た間木は「あんなに速い球は自分には投げられない」と悟りつつ、3年生を差し置く同級生を見て、「悔しいと思った」。

 間木は野球部では珍しい「特進コース」の生徒だ。土曜日にも授業があり、練習試合に参加できない日がある。ただ、投球術は一級品。マウンドに上がれば打者との駆け引きにたけ、多彩な変化球で安定した投球を見せてきた。

 夏を経て、新チームから間木が主将を任された。「マウンドさばきが良く、勝てる投手」(大角監督)とエースナンバーも背負う。

 今朝丸は「勉強もあるのにキャプテンもやっていて大変だと思う。僕には無理です」。一方で、「本当は1番を譲りたくない」とも。

 両右腕は投球スタイルも性格も正反対。だが、自分にはないものを持つ相手にひかれた。

 練習中はいつも一緒だ。グラウンド外でもその関係は変わらず、一緒に銭湯に入ったり、カラオケに行って点数を競ったり、今朝丸の家でゲームをしたり。ライバルか、友人か。そう問われた2人は「親友」と口をそろえた。

 2人でいると、昨春の選抜大会決勝の話題にもなる。山梨学院戦で先発した間木は五回につかまり、継投した今朝丸も本塁打を浴びた。

 「1球で試合の流れって変わってしまうよな」

 「次は絶対日本一になろうな」

 苦い思い出も共有し、練習に打ち込むエネルギーに変えてきた。

 今朝丸は言う。「間木がいるおかげで自分は成長できた」。間木も同じ気持ちだ。「今朝丸とはずっと切磋琢磨(せっさたくま)している」

 今春の選抜は2人で交互に先発した。1年ぶりに迎えた決勝は、1点を追う九回表。味方の反撃を信じてブルペンで肩を作る間木の元に、今朝丸がベンチから駆け寄った。

 「自分には代打が出るから、九回裏のマウンドは任せたぞ」

 だが、そのまま追いつくことはできず、間木の登板はなかった。

 試合後に涙を浮かべた今朝丸は「もし打たれても間木がいる」と思って投げていた。間木は「今朝丸の気持ちが上がるような言葉かけを意識した」。

 再び悔しさを味わった2人。夏こそ、歓喜の瞬間を分かち合う。室田賢

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