死亡した宝塚劇団員の母、「訴え」を公表 「たくさんの複雑な想い」

宝塚歌劇団問題

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 昨年9月に亡くなった宝塚歌劇団の劇団員の女性(25)の遺族側代理人弁護士は28日、歌劇団側と合意したことを受けて、都内で会見を開いた。会見では、女性の母親による「訴え」とする文章を公表した。全文は以下の通り。

    ◇

 あの日から季節は幾度か変わりましたが、私たちの時間は止まったままです。

 娘を想わない日はありません。娘に会いたい、抱きしめたい、ここに居てくれたらと一日のうちの瞬間、瞬間に何度も思っています。

 そして、助けられなかったことを悔い、娘に謝っています。

 娘の夢をみて、目覚めた時の現実の虚(むな)しさに打ちのめされる、そんな朝を何度迎えたでしょうか。

 パワハラが無かったことを前提に作られた調査報告書は、こともあろうか劇団HPに掲載されました。

 過重労働については見解の違いはあったものの、ある程度認める内容でしたが、パワハラについては、全ては娘に非があった、そのための正当な範囲内での指導だった、パワハラは一切無かったという酷(ひど)い内容でした。

 劇団が依頼した弁護士の聞き取りの場で、私たちが提出した娘の悲痛な言葉や証拠、そしてパワハラを実際に見聞きし、全てを話してくださった劇団員さんの数々の証言も全く反映されておらず、パワハラを行った側を擁護する内容でした。

 劇団側にHPでの掲載を止めるように繰り返し求めましたが、1ケ月以上経ってからようやく抹消されました。

 調査報告書の内容を盾に「パワハラはありませんでした」と断言され、「根拠があるなら是非お見せいただきたい」と画面越しに挑んでこられた劇団の記者会見は、今でも鮮明に覚えています。

 それに対して、調査報告書の誤りを詳しく指摘し、私たちが入手した証拠や劇団員さんからの証言を、直接提出しましたが、劇団は、第三者委員会を設置することはなく、パワハラを行った人の意見のみを聞き、それを擁護しました。

 今更ながら、2年半前にヘアアイロンによる火傷(やけど)があった時に泣き寝入りせず、声を上げれば良かった、昨年2月に劇団がヘアアイロンによる火傷の事実を「事実無根」と発表した時に抗議すれば良かったと、後悔してもしきれません。

 いずれにしても、事実は隠蔽(いんぺい)され、娘の居場所は無くなっていたかもしれません。けれど、声をあげておけば、娘の命は救えていたはずです。

 阪急阪神ホールディングス、宝塚歌劇団の幹部の方々に、もしご自分の娘が同じことになったら、どうされたのかと、お尋ねしたいです。

 娘は決して弱かったわけでも、我慢が足りなかったわけでもありません。過酷な労働環境と、酷いパワハラの中でも、全力で、笑顔で舞台に立っていました。強く生きていました。私たちはそんな娘を誇りに思っています。

 娘の尊厳を守りたい一心で、今日まできました。

 事実を訴え続けた結果、当初は過重労働のみを認め、一切パワハラは無かったと主張された劇団が、多くのパワハラを認め、本日ようやく調印となりました。

 言葉では言い表せないたくさんの複雑な想いがあります。

 娘に会いたい、生きていてほしかったです。

 最後になりましたが、娘にお心を寄せてくださった方々に感謝を申し上げます。

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