淀川の天然アユは9割が木津川産だった 「砂が動く川づくり」が鍵に

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編集委員・佐々木英輔
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 京都府大阪府の境、天王山のふもとにある淀川水系の合流点。京都盆地からの桂川、琵琶湖からの宇治川三重県からの木津川が交わり、淀川に名前を変える場所だ。川に挟まれた「背割堤(せわりてい)」は、桜の名所としても知られている。

 ここを流れ下るアユの赤ちゃん(仔魚(しぎょ))の数の調査から、三つの川の大きな違いが明らかになってきた。

 淀川から大阪湾へと向かう天然のアユの実に9割が、木津川生まれだったという。

 アユはサケと違って、必ずしも生まれた川に戻るわけではない。大阪湾で成長して再び淀川に戻り、桂川や宇治川へと上がっていくアユも、元をたどると多くが木津川産ということになる。

 この違いを分けているのが、川にもたらされる土砂の量だという。

 合流点付近の航空写真をみると、違いが一目瞭然だ。木津川は土砂が積もってできた砂州が多く、流れが蛇行している。

 一方、宇治川に砂州はなく、流れもまっすぐ。桂川には少しあるが、植生に覆われているところも多い。

 「アユの繁殖には、土砂が動くことによってできるやわらかい砂利の川底があることが不可欠。木津川が、宇治川や桂川のアユも支えているんです」。仔魚調査を続ける「京の川の恵みを活(い)かす会」代表の竹門康弘・大阪公立大客員研究員はこう話す。

 やわらかな砂利は、卵を隠すのに都合がよい。固く締まり、藻や有機物が付着した川底では、産卵したとしても卵が生き延びにくいという。外敵にさらされたり、流されたりしやすく、十分な酸素も得にくい。

 調査は、体長数ミリほどの仔魚を数える地道な作業だ。産卵期の11月の夜、三つの川で10分間ずつ、1時間おきに網を落とし、かかった仔魚を数える。これをのべ3日間にわたり、繰り返す。

 数が多かった2021年は、桂川が3匹、宇治川が132匹だったのに対し、木津川は2446匹と圧倒的だった。年によって増減はあるが、いずれも木津川が大半を占め、多い年は9割を超える。

 では、なぜ川によって土砂の量が違うのか。

 流域の形や地質などの特徴に加え、大きいのがダムの存在だ。

 宇治川は、琵琶湖との間に天…

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