文化庁が京都市に移転し、27日で1年を迎える。政府が掲げる地方創生の一環で、明治以来初の中央省庁移転が実現したとはいえ、東京にも拠点が残る2拠点体制が続く。目標とする地域目線での政策立案を進めつつあるが、成果が出るにはまだ時間がかかりそうだ。
同庁にある9課のうち、文化財関連を中心に五つが東京・霞が関から移転したのは昨年3月27日。距離の離れた京都へと移る課題の一つは、国会対応や他省庁への説明だった。
2023年度予算には東京への出張旅費として約4300万円を盛り込んだが、政策課の篠田智志課長は「コロナ禍でリモートが進み、出張対応は当初の予定より少なくすんでいる」と話す。
議員から説明を求められると、大半はリモートでの説明に理解を示してくれるようになった。
むしろ想定以上にリモート対応が増えた。京都庁舎では一度に使用する人数や通信量が集中し、整備していた通信量を超えた。オンライン会議の画面が一時止まったり、遅くなったりしたため、京都庁舎のWiFi(ワイファイ)を増強したほどだ。
宗務課や世界遺産の担当は東京のまま
ただ移転した宗務課は、実際には旧統一教会問題で職員が東京に残ったまま。法務省や警察庁など他省庁からの応援も交え、国会対応や事務作業、献金被害者からのヒアリングに追われた。昨年10月には解散命令請求にこぎつけたが、裁判所の判断が確定するまでは長期化するとみられ、いまだに京都に移る時期は見通せない。京都庁舎には非常勤職員が2人勤務するのみで、常駐する職員はいない。
著作権や文化芸術振興などを担う4課は、他の省庁や関係団体との連携が多いとの理由で、そもそも東京に残る。京都に移った文化資源活用課も、国が世界遺産登録をめざす佐渡金銀山遺跡(新潟県)の対応のため、担当を東京に置いている。
幹部の一人は「中央省庁の最大の仕事は国会と予算。それを東京でやる以上、やはり軸足は置かざるをえない」ともらす。
それでも移転後初となった同庁の24年度予算では、740億円(一部重複計上あり)を「京都移転を契機とした文化振興の新たな展開」のための予算と位置づける。
文化財や文化観光の政策が進む一方で、文化庁に続く省庁移転は検討されていません。記事の後半で課題などを紹介します。
地域の誇りである文化財の修…
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