第3回宮沢りえ、井上陽水、木村拓哉 操上和美が惚れ込んだ被写体の魅力

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 おやじと仕事の話をしたことはほとんどありません。若いころ正月に帰省して「最近仕事が来るようになって少し楽になった」と話すと、うぬぼれるなと言うような昔気質の人でした。 故郷を捨てるように東京に出てきたけど、1994年に父が死んで、おやじが84年を生きた北海道という場所をちゃんと見たいと思ったんです。その旅についてきてくれたのが、敬愛する写真家の故・ロバート・フランクでした。

 写真家・操上和美さんが半生を振り返る連載「88歳のポートレート 『ぎりぎりまで近づいて』」。全3回の最終回です。(2024年2月に「語る 人生の贈りもの」として掲載した記事を再構成して、配信しました。

 《現代写真の巨匠フランクは、スイスに生まれ23歳で米ニューヨークに移住。写真集「The Americans」は写真界に大きな影響を与えた。2019年、94歳で死去した》

 あこがれていた彼をどうしても撮りたくて、92年にニューヨークを訪ねました。彼が晩年を過ごしたカナダ・ノバスコシア州にも撮影に行き、夜は酒を飲みながらいろんな話をしました。彼は娘と息子を早くに亡くして、悲しみを背負って生きているようだった。ノバスコシアは北海道に似た気候で、いつか一緒に行けたらいいですねとも言っていたんです。

 父を亡くしたあと、横浜での…

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人生の贈りもの

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あのときの出来事が、いまの私につながっている――様々な分野で確かな足跡を残してきた大家や名優に、その歩みを振り返ってもらいます。[もっと見る]

連載操上和美 88歳のポートレート「ぎりぎりまで近づいて」(全4回)

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