「不適切にもほどがある!」への違和感 すっぽり抜け落ちたものとは

有料記事カルチャー・対話

聞き手・佐藤美鈴
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 宮藤官九郎さんが脚本を手がけるテレビドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)が議論を呼んでいる。タイムスリップによって昭和と令和の価値観の違いを浮き彫りにし、現代社会に一石を投じる物語だ。これまで宮藤さんのドラマを好きで楽しんできたからこそ、と「違和感」を発信する作家がいる。ジェンダーやセクシュアリティー、フェミニズムの視点から執筆する鈴木みのりさん(42)。ドラマの問題点と提案について聞いた。

 ――SNSで問題点を発信しています。

 初めは「ちょっと気になる」くらいでした。だんだん自分の関心や実存とも関わるテーマが扱われるようになって、看過できなくなってきました。

 宮藤さんのようにカルチャー面での固有名詞を扱いながら、差別とは考えられていなかった過去の事象や社会構造自体を問いつつ、面白いドラマや演劇を作る若手も出てきています。一方このドラマは、意図的に差別的な言動をする人物を主人公にしながら、その考えを相対化してきたフェミニズムや人権感覚への揶揄(やゆ)に寄与してしまっていると思うようになりました。

 ――話題のドラマでもあり、批判も含め反響も大きいのでは。

 「クドカンの作風を考えたら文字通り受け止めるのは誤読」「最終回までの回収を待ちましょう」「嫌なら見なければいい」といった声があります。

 「クドカンの作風は最終回までに伏線がすべて回収される」といったドラマ構造を含め、自分も好きで楽しんできたからこそ、視聴者として文化やその価値基準を形成してきたという意味で自分自身も問われている、と思い、違和感を発信しました。仮に今後「回収」があるとしても、その手前で「おかしい」と批判することも可能ですし、誰もが「最終回を待とう」とならなくてもいいはず。

 ――具体的にはどこに「違和感」を覚えたのでしょうか。

 ドラマでは「昭和」と「令和…

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