意図せず出る声や動き「トゥレット症」患者の映画 声出しOK上演も

小原智恵
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 声が出たり、身体が動いたりしてしまうトゥレット症のウーバーイーツの配達員らを追ったドキュメンタリー映画「僕と時々もう1人の僕~トゥレット症と生きる~」が22日から上映される。声を出してしまうため、映画館になかなか行けない患者たちのため、1回のみ特別に上映中の声出しができる。

 「チックという病気があり身体の動きや声が出てしまう事がありますが許していただけると幸いです」。今作の監督でCBCテレビの柳瀬晴貴記者(27)は2022年2月、ウーバーイーツで出前を頼んだ際、名古屋市の配達員・棈松(あべまつ)怜音さん(29)からそんなメッセージを受け取った。意図せず声が出たり、身体が動いたりしてしまうチックが慢性化した「トゥレット症」。この出会いがきっかけとなり、トゥレット症の患者たちを追うことを決めた。

「ごめんなさい」が口癖、生きづらい現状

 怜音さんを追う中で、「変な人」と後ろ指を指される、まねをされる、騒音がある工事現場が好きな場所、「ごめんなさい」が口癖――。柳瀬記者は怜音さんのような患者たちが社会で生きづらい現状がわかってきた。大園康志プロデューサー(58)も「最初に怜音さんにあった時、その声の大きさに驚いた」と現実に驚き、柳瀬記者に伴走すると決めた。大園さんが初めて出会った日、怜音さんが離れた故郷・鹿児島市の中学校の母校が大園さんと同じだということもわかり、校歌を一緒に歌ったという。

 その後、ドキュメンタリー番組も制作。怜音さんだけでなく、関東に住む就活生や、トゥレット症を研究する医師、当事者団体なども取材し、トゥレット症の患者たちの社会での生きづらさを描いた。また、一方で番組の中では怜音さんが「社会に知ってもらいたい」という怜音さんが千葉の小学校で授業する様子も映す。タイトルは、怜音さんが発した「自分の中にもう一人の自分がいる」という言葉から、「僕と時々もう一人の僕」と決めた。番組は今年度のギャラクシー賞のテレビ部門入賞作品の7作品のうちの1作品に選ばれた。

理解を広めることが鍵に

 柳瀬記者によると、トゥレット症にはいまだ根本的な治療法は見つかっていないと言い、「理解を広めて、社会を変えることが患者たちの生きやすさにつながる」と話す。23日には、「迷惑をかけるかもしれない」と映画館に行けない当事者に映画を見てほしいと、全国でも珍しい声出し可能上映を行う。柳瀬記者と大園プロデューサーはこの上映方法が「全国で広がってほしい」と動いているところだ。

 22日から4月4日に名古屋・栄のセンチュリーシネマであるTBSドキュメンタリー映画祭2024の名古屋限定作品として上映される。22日午後0時半、23日午後0時35分から(上映後柳瀬監督と怜音さんの舞台あいさつがある)、31日は時間未定。小原智恵

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