松本市長に臥雲氏再選、次点と477票の僅差 パルコ問題で急追招く

佐藤仁彦 安田琢典
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 無所属の5人が争った長野県松本市長選は17日に投開票され、現職の臥雲義尚氏(60)が新顔4人を破り、再選を決めた。終盤、次点となった元信越放送専務の菱山晋一氏(68)に追い上げられたが、477票差の僅差(きんさ)で競り勝った。当日有権者数は19万4356人。投票率は44・67%(前回48・38%)で過去最低だった。

 元衆院議員秘書の赤羽俊太郎氏(41)と不動産会社長の上條邦樹氏(54)、無職の竹内貴也氏(58)も、1期目の実績や知名度を生かした選挙戦を展開した現職に及ばなかった。

 17日深夜、臥雲氏の当選確実がテレビで速報されると、陣営が設けた市内の会場で待ち受けた支援者から歓声が上がった。臥雲氏は神妙な面持ちで頭を下げ、「この1週間は、世の中が動くときはこういうふうに動くのかと思った。この流れに流されては、街の底力と誇りが失われてしまうという危機感をもって、訴えを続けてきた」とあいさつ。「松本は様々な課題を抱えている。その一つ一つに向き合い、松本をもっと豊かで幸せにしていく」と2期目への抱負を述べた。

 臥雲氏は、全市的な後援会組織を軸に、4年間の実績と政策をアピール。連合長野の推薦も得て、支持を広げた。

 選挙戦で最大の争点として浮上したのは、来年2月に閉店する「松本パルコ」の建物の活用に市がどう関与するかという問題だった。

 臥雲氏は「街の空洞化を防ぐため、行政が積極的に民間と再生に向かうべきだ」と訴え、中心街にあるパルコに図書館機能や子育て支援などの役割をもたせた公共施設を設ける案を提示。パルコ側に20年間で計60億円を払い、新館の3~6階部分を借りる方針への理解を求めた。

 これに対し、ほかの候補からは「拙速だ」「高額の賃貸借契約をなぜそんなに急ぐのか」などと異論が相次ぎ、菱山氏の急追を招いた。再選を決めた臥雲氏は「パルコの問題は、もっと時間をとって市民に説明しなければいけなかった。みなさんに共感、納得してもらうプロセスをただちに進める」と話した。

 臥雲氏はほかに、多子世帯の3歳未満児の保育料無償化や市立特別支援学校の新設などを公約。松本駅前を「総合交通ターミナル」に再編する方針も掲げた。しかし、子育て世代など若年層の支持の一部は、若者支援などを訴えた40代の赤羽氏に流れたとみられ、パルコ問題以外に目立った争点がなかったこともあって投票率が伸び悩み、前回選挙から票を積み増せなかった。

 一方、立候補表明まで市民にとって無名に近かった菱山氏は、菅谷昭・前市長と坪田明男・前副市長に加え、一部の市議や立憲民主党の国会議員らの応援を受けた。臥雲氏が市議会と対立を繰り返し、市庁舎建て替えなどが円滑に進まなかったとして「市政の停滞」を批判。パルコ問題では、土地建物を市が買い取り、市が施設を整備する案を主張。市政の転換を求めた。

 また、高齢者のごみ出しや買い物、通院を支援する福祉政策を掲げ、60歳以上の有権者にも支持を広げた。ただ、臥雲氏の市政運営に批判的な層の支持が一部、赤羽氏に流れるなどして、あと一歩及ばなかった。

 17日深夜、臥雲氏が当選確実との報道があると、同市浅間温泉の事務所に集まった菱山氏の支持者約60人から「えーっ」「バカな」といった落胆の声が上がった。間もなく駆けつけた菱山氏は、硬い表情のまま「ご支援いただいたが申し訳ない。受け入れるしかない」と頭を下げた。接戦となった選挙結果について、「このことを臥雲さんは重く受け止め、市民の声を聞いてほしい。フリーハンド(で市政運営できる)というわけではない」と釘を刺した。佐藤仁彦、安田琢典)

松本市長選確定得票

34070 臥雲義尚 (60) 無現

33593 菱山晋一 (68) 無新

14983 赤羽俊太郎(41) 無新

 2224 上條邦樹 (54) 無新

 1167 竹内貴也 (58) 無新

(3月17日投開票)

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