第4回ドイツ流のAI開発と期待を背負う新興企業 「技術主権を取り戻す」

有料記事GDP逆転 ドイツを歩く

ベルリン=寺西和男
[PR]

 ドイツ最古の大学があり、のどかな雰囲気が漂う南西部ハイデルベルク。

 そこに、いまドイツの政府や多くの企業の期待を背負う企業がある。その事務所は、郊外にある工業団地の少し古いビルの2階にあった。

 生成AI(人工知能)を開発するスタートアップ企業「アレフ・アルファ」。米アップルでAI開発にたずさわっていたヨナス・アンドルーリス最高経営責任者(CEO)(42)が2019年に創業し、今の従業員数は約70人。

 対話型AI「チャットGPT」のような一般ユーザー向けとは違い、より複雑な情報の処理が求められる企業や行政機関向けに、生成AIの基盤技術となる大規模言語モデルを開発する。独ソフトウェア大手SAPなどが自社サービスに使っているほか、地元のバーデンビュルテンベルク州政府でも大量の文書から必要な情報を取り出す作業などに使われているという。

【連載】GDP逆転 ドイツを歩く

名目国内総生産(GDP)で日本を追い抜いたドイツ。製造業の拠点として成長してきましたが、足元では経済は低迷しています。ドイツ各地を歩き、その強みと課題を報告します。

 昨年11月には、独自動車部品大手ボッシュのグループ会社やSAPなどのドイツ大手企業を中心とした投資家から、一度の資金調達として欧州のAIスタートアップでは最大規模の計5億ドル(約750億円)以上の開発資金を集めた。記者会見にはハーベック経済気候相も参加し、「(AI開発に)アクセルを踏まなければならない」と訴えた。スタートアップ企業の資金調達の発表に、閣僚の出席は極めて異例だ。

ドイツ流のAI開発、見据えるのはものづくりの競争力アップ

 同社に期待が集まるのは、なぜか。

 巨大な市場を握るビッグテッ…

この記事は有料記事です。残り1436文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら