コマづくり、子どもらに教えたのは「日本一」になった町工場のオヤジ

石橋英昭
[PR]

 宮城県岩沼市の岩沼南小学校で2月27日、5年生を対象に、金属製コマづくりの特別授業があった。教師役はこの2月、初の「日本一」に輝いた地元の町工場のオヤジだ。

 児童たちがつくったのは、アルミやステンレスの部品を組み合わせた直径2センチほどのコマ。ハンドプレス機や圧入治具の使い方を教わりながら、1人1個ずつコマを組み立てた。

 そのあとは、友達との勝負の時間。机の上で、どっちが長く回るか、ぶつかってどっちがはじかれるか、競い合った。

 手取り足取り教える千葉厚治さん(48)は、市内にある「岩沼精工」の社長。従業員約60人で、半導体、航空機業界向けの精密部品加工やその工具づくりなどが、本業だ。

 「遊び」にもみえるコマづくりを始めたのは、東日本大震災がきっかけだ。

 13年前、海近くの工場は津波で1・5メートル浸水し、泥だらけになった。多くの支援を受けて再起した後、思いついたのが、全国の中小企業が自作のコマを持ち寄り戦う「全日本製造業コマ大戦」への挑戦だった。

 「大会に出てメディアに取り上げられれば、『ここまで復興できた』とみなさんにお礼が言える」と、千葉さんは考えた。もちろん、金属加工の技術には自信がある。

 コマ大戦が発足した2012年から、地区大会に出場。15年には最高峰の「世界コマ大戦」に出て3位、17年の全国大会は準優勝だった。コロナ禍での中断を経て、7年ぶりに挑んだ今年、横浜市で開かれた「G1最強コマ決定戦」で、32チームのトーナメントを勝ち抜いた。

 コマ大戦のルールは、静止状態で直径2センチ、全長6センチ以下のコマを、直径25センチの土俵で対戦させ、土俵外に出たり先に止まったりすれば負けだ。

 千葉さんは「ぷろぺら」と名付けた優勝コマを実際に回して見せながら、従業員たちと改良を重ねて最強にしていった過程を、児童らに解説。聴き入っていた我妻咲奈(さな)さん(11)は「いろんな発想で強くしていったのが、すごいな」。

 千葉さんは8年ほど前から、地域の小学校でコマづくりの授業に取り組んでいる。「最近は工業高校に進む若者も少なく、町工場はどこも人材不足。子どもの時にものづくりの経験をすることで、将来興味を持ってくれれば」と話した。石橋英昭

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら