1冊の絵本が起こしたジェンダー論争 スウェーデンの新語から考える

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聞き手・田島知樹
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 社会の多様性や人権の先進国であるスウェーデンでは、2012年以降、ある新しい言葉が社会に広まりました。「hon(彼女)」でも「han(彼)」でもない新代名詞「hen(ヘン)」です。この言葉が定着していく様子を現地で見てきた翻訳者のヘレンハルメ美穂さんは「hen」がいかに生まれ、受け入れられていったかを知ることで、マイノリティーに対するスウェーデン社会の変化を理解できる、といいます。

 ――「hen」とはどういう言葉でしょうか。

 「彼」でも「彼女」でもない人を表すジェンダー・ニュートラルな代名詞です。英語でも近年「he(彼)」でも「she(彼女)」なく、「they」を使う人が増えていますが、それと同じです。

 日本語などは主語を略すことができるのですが、スウェーデン語は基本的に動詞には必ず主語をつけなければいけません。性自認が男でも女でもない場合や性別を特定されたくない時に使う代名詞として、現在は使われています。

 ――いつ生まれたのでしょうか。

 スウェーデン語は元々、言葉…

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    仲岡しゅん
    (弁護士)
    2024年3月5日9時0分 投稿
    【視点】

    英語圏の一部の人々の間では、ジェンダーニュートラルな代名詞「they」が使われているのは聞いたことがありましたが、スウェーデン語でも「hen」という代名詞が使われているというのは初めて聞いたので勉強になりました。 言葉は時代の移り変わりに

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男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]