涼やかな味わいに 長野県宮田村の蒸溜所、地元産大麦でウイスキー

佐藤仁彦
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 長野県宮田村と駒ケ根市で栽培された二条大麦を原料とするウイスキーの仕込み作業が、本坊酒造(鹿児島市)のマルス信州蒸溜(じょうりゅう)所(長野県宮田村)で始まった。地元農産物の6次産業化を図る試みで、ウイスキー造りは5年目。28日は出来栄えに期待を寄せる大麦の栽培農家らが現地を訪れ、工程を見学した。

 今月21日に始まった仕込み作業では、昨年6月に収穫された大麦の麦芽(モルト)を約21トン使用。モルトは機械で粉砕した後、湯と混ぜておかゆ状態に。これを濾過(ろか)してつくった麦汁に酵母を加えて数日間、タンクで発酵させたら、さらに蒸留釜で2度蒸留し、アルコール度数を高める。

 一連の作業は3月まで続き、できあがった原酒はたるに詰めて、3年以上熟成させる。

 原酒は当初、無色透明に近いが、年数を経るとともにウイスキー特有の琥珀(こはく)色になる。今回の仕込み分では、700ミリリットル瓶で2万本ほどのウイスキーができる予定だ。

 同社で製造主任を務める佐々木雄介さん(39)によると、今回使った大麦はデンプン質が多く、ウイスキーに適しているという。「中央アルプス南アルプスに囲まれた冷涼な環境のもとでつくるだけに、こうばしい香りと、涼しげな味わいが特徴の酒になってほしい」

 宮田村で大麦の栽培を始めて3年目という森田一雄さん(59)は「自分でつくった大麦がウイスキーとなって世に出ると考えるとわくわくする。村のPRにつながり、地域貢献になればうれしい」と話した。

 両市村は寒冷地仕様の大麦の品種「小春二条」を使ったビールとウイスキーの商品化に取り組んでおり、同社の仕込みもその一環。

 南信州ビール(駒ケ根市)が製造したビール「宝剣岳Ale(エール)」はすでに販売実績があるが、ウイスキーは昨年9月、20年に仕込んだ初回分の試飲会が開かれたばかりで、発売時期は決まっていない。

 大麦は現在、両市村の18農家が栽培しており、23年度の栽培面積は約10ヘクタール、収穫量は約2万6900キロ。24年度は栽培面積が2ヘクタール以上増え、収穫量も約3万8400キロとなる見込みだ。佐藤仁彦

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