何度も破られる国際法は「不存在」なのか 言論で折り合う精神を再び

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田島知樹
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 「イスラエルによる国際法の順守は揺るぎない」

 今年1月26日、イスラエルのネタニヤフ首相は声明で強調した。パレスチナでは日々、武器を持たない市民がイスラエルの空爆によって亡くなっている。

 「国連憲章51条に従って特別軍事作戦を始める」

 2年前の2月24日、ロシアのプーチン大統領は説明した。自衛権をうたう国際法の名の下に始まったウクライナへの全面侵攻は、今もまだ続いている。

 国家間の関係を規制するはずの国際法に、意味はあるのだろうか。

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コソボ紛争イラク戦争でも

 「ロシアのウクライナ侵攻によって国際法の不存在が露呈した」

 国際教養大の豊田哲也教授(国際法)は話す。当然「存在」している国際法はある。例えば、国際通商法などは多くの国家が世界貿易機関(WTO)を中心に守ろうとし、それなりの法秩序がある。

 一方で武力紛争に関わる国際法は違う。確かに条約など法規則の文言は存在する。プーチン大統領が引用した国連憲章もそうだ。だが、豊田さんは「その意味や定義をめぐって一度も合意できたことはないのではないか」と話す。

 実はこの「不存在」の問題は冷戦後すぐに露呈していたという。その一つが旧ユーゴスラビアのコソボ紛争だった。

争いと分断が広がり混沌(こんとん)とする現代世界を、歴史や思想をもとに考える文化面企画「混沌の先に」。記事の後半では、「国際法の精神」について考えるために歴史を100年ほどさかのぼります。

 ユーゴはクロアチアやセルビ…

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