脱サラしてロシア・トゥバへ 喉歌が変えた人生、思い込めたアルバム

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田島知樹
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 喉(のど)をギュッと詰め、震わせる。高低豊かな音色が響き、重なり合う。喉歌という。

 この歌唱文化に魅せられ、ロシア・南シベリアに通う音楽家がいる。ロシア・ウクライナ戦争の影響で現地にはしばらく行けていない。それでも遠い日本から、人生を変えてくれた場所への思いを込め、歌い続ける。

 出会いは大学の音楽の授業だった。有名歌手がモンゴルを旅し、喉歌(ホーミー)の魅力を探る番組を見た。歌手が喉を震わせ、重厚な音を鳴らしていた。

 「なんだこれは」

 寺田亮平さん(45)は衝撃を受けた。

 ミュージシャンが夢で大学でも音楽活動に没頭していた。だが喉歌には、今まで聞いてきたどんな音にもない魅力があると感じた。

 さっそくCDショップへ。すぐに見つけた。4人組グループのアルバムでトゥバ出身とある。調べると、ロシア連邦にある北海道二つ分ほどの共和国とあった。喉歌はモンゴルや南シベリアの文化で、トゥバでは歌いながら、合間に喉歌を披露することも知った。

「まだかっこいいなくらいでしたけど」

 見よう見まねで喉歌を学び始めた。

初めてトゥバへ

 大学を卒業し、一般企業に就職した。音楽活動も続けた。トゥバへの興味は深まり、この頃には喉歌だけでなく歌詞が気になり始めた。感情を震わす何かがあった。訳から自然を歌っていることは分かる。だが、それどまりだった。

 31歳でサラリーマンを辞めた。音楽で生きていくと決心した。そのためにすべきことがあった。空路を乗り継ぎ、丸2日かけてトゥバを訪れた。

人生を変えてくれた国は、2年前にウクライナに全面侵攻しました。寺田さんは複雑な思いを抱きながら、昨秋アルバムを出しました。

 そこは「天国のよう」だった…

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